マイホームを手放さずに債務整理する方法
- 2015/8/12
- 債務整理
マイホームは手放せないけど生活が苦しい・・・
個人破産をすればマイホームは破産財団に組み込まれるか、抵当権が付されている場合には別除権の行使として競売にかけられることになります。
要するに、マイホームは手放さざるをえなくなります。しかし、当該住居は大変気に入っているといった場合や生活の本拠としてそこでなければ困る場合など、経済状況が苦しくても手放すことができない方もいらっしゃることでしょう。
そのような方のために、マイホームを手放さずに経済状況の改善を図る手続として、民事再生手続が用意されています。もっとも、通常の民事再生手続のみではマイホームに付された担保権の実行等に確実に対応することができません。
そこで、民事再生手続に「住宅資金貸付債権に関する特則」を適用して民事再生を行っていくことになります。
民事再生と破産
破産手続は清算型倒産手続と呼ばれる倒産手続の一種である一方、民事再生手続は再建型倒産手続と呼ばれる倒産手続の一種です。
この清算型と再建型の違いは前者はリセットに近い一方、後者は再起を図るものです。破産は原則として既存の債務について支払義務がなくなります。一方、民事再生は再生計画を立てて債務を縮小し支払期限を延ばすなど基本的に債務の一部の支払を継続するものです。
経済状況が困窮している方がどの倒産手続を選択するべきかといった点は専門家でも判断が困難な場合もあります。
基本的には再建型を検討し、これが困難な場合は清算型を選択するということもよく言われていますが、マイホームがない場合などはむしろ清算型というか破産を選択することが多いかもしれません。なお、再建型の場合には、①経済状況が困窮するに至った原因の除去可能性、②再建の担い手、③メインバンクの動向、④資金繰り、⑤収益の回復の可能性などが考慮要因となります。
民事再生手続を選択した場合であればすぐにマイホームが手放さなくてもよくなるわけではありません。
住宅ローンには抵当権が付されていることがほとんどですので、抵当権者が別除権の行使として競売にかけられてしまいます。そこで、住宅資金貸付債権に関する特則の適用が必要です。逆をいえば、住宅ローンをすでに完済している場合であれば民事再生によりマイホームを失うことはありません。
住宅資金貸付債権に関する特則
この特則は、抵当権実行を制限して住宅を失うことなく、住宅ローンの完済を目指すものです。再生計画において住宅資金特別条項を定めることができ、これにより弁済の繰り延べをすることができます。
条項の内容としてはすでに期限が到来している債務についてのみ一定期間内に支払うことを約し、期限が未だ到来していない債務については当初の予定通り返済を約束するタイプの正常返済型(期限の利益回復型)とよばれるものが基本となります。例外的に、最長10年、70歳までの住宅ローンの支払期限を延長してリスケジュールするリスケジュール型も認められています。これらの複合型やこれらとは異なる変更をする合意型もあります。
これらの特別条項を定めるにあたっては、相手方やその保証会社は意見陳述の機会は有するものの、議決権は有しないので、この条項を定めるにあたって、これらの者の反対があっても定めることができます。
なお、住宅資金貸付債権についての抵当権についてのみこの特別条項が付けられるのであって、他の借金の担保などに供されている場合にはこのような定めを置くことはできません。この場合には、抵当権者等との担保権実行について中止命令等を検討するしかありませんが、あまり期待できません。
色々と小難しい言葉を並べてしまいましたが、要するに、債務をかなり圧縮しつつ(1/5程度と考えてください)、弁済を3年程度の期間かけて行うことでマイホームを手放さずに済むことがあるということは、覚えておいて損はありません。