超高齢社会に伴い変わる介護保険制度

超高齢社会?2025年問題?

日本は高齢化社会だ!と言われて久しくなりました。もう20年くらい前から言われているような気がしますが。。。それもそのはず、正確には「超高齢社会」が日本の実情です。総人口に対して65歳以上の高齢者人口が占める割合を高齢化率といいますが、7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」というそうです。

日本は順に1970年、1994年、2007年にこのラインを超えてきました。高齢化現象は経済的に豊かな先進国に見られる事情なのですが、他国に比べると、日本は各段階に至るスピードが群を抜いているそうです。2014年は高齢化率が26%に至っていますから4人に1人は65歳以上ということになります(信じられます?)。

このように圧倒的スピードで高齢者が増えれば年金や介護の保障を全員に行き渡らせるために制度の準備が必要です。このような状況下で徐々に準備は整ってきている現況を今回は介護制度に限って見ていきたいと思います。

介護にも介護保険があるのですが、これは6年に1度見直そうという取り決めがあったにも関わらず、2025年問題に対処するために3年前倒して2015年から制度に変更がありました。どのような点に変更があったのかを含めて見ていきたいと思います。

 

介護を助ける

先ほどの2025年問題とは、いわゆる団塊の世代が75歳以上になることから医療・介護の需要が高まることが予想されているといった問題です。最近では団塊の世代の定年による一斉定年が始まることによる2012年問題がいわれていました。現行の保険制度ではこの急激な医療・介護需要に対処できないことから今回改正されるに至りました。介護関連については以下の保険等があります。

 

介護保険

高齢者が増えれば介護需要は高まりますが、これを全て家族の負担とするのではなく社会全体の負担とするために介護保険制度が採用されています。40歳以上のすべての国民に加入義務があり、加入以降保険料を納付しなければなりません。65歳以上になっても年金から天引きされる形ですが納付することととなっています。

介護保険制度を利用するには利用申請をしなければなりません。介護保険対象行為を行っても直ちに介護保険が適用されるわけではない点には注意が必要です。申請後2度の審査を経て要介護or要支援の認定、または認定が降りないといった判断がなされます。ここで認定された度合いにより受けられるサービスに違いがあります。なお、ケアプランという介護計画書の作成提出が必要ですが、ケアマネージャーに作成を依頼した場合でも作成費用は介護保険から出るので、依頼することをおすすめします。

サービスを受けるに当たっては基本的に費用の1割が自己負担になります。また、収入状況によっては2割の自己負担になることが今回の改正で決まりました。そして、要介護の場合は介護給付が、要支援の場合は予防給付がなされることになりますが、具体的には以下の内容のサービスが受けられます。

 

訪問サービス

ホームヘルパーなどが自宅にやってきて、家事や介護を手伝ってくれる訪問介護が受けられるサービスです。

要介護の方には、入浴、排泄、食事、介助などの身体介護と、掃除、調理、選択などの生活介護が行われます。

要支援の方には、身体機能の低下を防ぎ、できない部分をサポートする範囲での介護予防訪問介護が行われます。今回の改正で、要支援の方の訪問介護については2017年4月までに段階的に全国一律から市町村長から取り組む地域支援事業に移行するとされています。

訪問サービスと以下の施設サービスとの間のサービスとして、デイサービスというものもあります。自宅で生活をしながら、送迎車を利用しつつ日帰りで施設に通って、食事や入浴などのサービスを受けることができます。また、専門家指導のもとリハビリや認知症ケアを受けることもできます。

また、通常は訪問サービスを受けるなどして自宅介護を行っている被介護者を、短期間の間のみ預かってもらうことにより、介護者の病気・急用や休養に充てるなどすることができるショートステイといったサービスもあります。サービス施設も集団生活をメインとした短期入所生活介護と医療ケアやリハビリをメインとした短期入所療養介護とがあります。

 

施設サービス

在宅介護が厳しくなった場合はもちろん、最初から家族当事者の判断で施設に入って介護を受けることができます。日本では道徳的に介護すべきだという風潮はありますが、家族に法律上の介護義務はありません(扶養義務というのはあります。)。

食事や排泄などの日常生活に関する介護を中心とする介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)、これに医療機能をも加えた介護老人保護施設(老健)、介護保険で利用できる介護療養型医療施設、その他地域密着型の施設があります。特養に関しては、今回の改正で要介護3以上の人のみが入所することができ、今までは入所が認められていた要介護1・2の人は「やむを得ない事情」がない場合には入所できないということになりました。

 

地域密着型サービス

施設サービスのひとつとして、自宅がある市区町村にある指定事業者が展開する介護サービスがあります。定員29名以下の特養である地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、同じく定員29名以下の有料老人ホームなどの介護専用型特別施設である地域密着型特定施設入居者生活介護があります(漢字多すぎですね)。また、訪問サービスの地域密着型サービスとしても、早朝や夜間に介護福祉士やホームヘルパーが自宅を巡回し、24時間対応の通報システムによる随時介護サービスをも備えた夜間対応型訪問介護や、デイサービスとショートステイを組み合わせた小規模多機能型居宅介護があります。

この他にも認知症対応のサービスもあります。

 

福祉用具レンタル・福祉用具購入サービス

車いすをはじめとした、特殊寝台、床ずれ予防器具、歩行補助杖、手すり、歩行器といった福祉用具についてはレンタル料について1割のみの支払でレンタルすることができます。

また、入浴補助用具、和式トイレを洋式トイレに変える腰掛け便座、尿を自動的に吸引できる特殊器具といった福祉用具については1割価格で購入することができます。(ただし、自治体指定業者からの購入に限ります。)

 

老人福祉手当

老人福祉手当は市区町村から出される給付金なので、給付基準はもちろん、名称も地域によって異なります。

主に65歳以上で在宅の認知症の人や寝たきりの人を対象に自治体が支給することになります。一般的には月額5000円前後のところが多いようです。もっとも、一定以上の収入がある方や他の公的年金を受給している場合には除外されることが多いので実際に受給できる人は限られているといえます。

 

老人介護手当

在宅で介護の必要なお年寄りの介護をしている家族に対して、介護の負担を軽減することを目的として自治体が支給する老人介護手当があります。老人福祉手当以上に自治体ごとの取扱いが異なるので給付条件も異なれば、支給額も年額18万円というところもあれば、月額5000円というところもあるので自分がお住まいの自治体にご確認ください。

 

訪問看護療養費支給

訪問サービスを看護師が行うといったものになります。介護保険の対象になりますが、低所得世帯に対しては、福祉医療制度で訪問看護費用につき助成金があります。

 

医療費控除

介護費用は福祉系の介護サービスについては医療費控除の対象になりませんが、医療系の介護サービスであれば福祉系と併せている場合であっても医療費控除の対象となります。

 

住宅を介護仕様に

家族の中に、若しくはあなた自身が介護が必要となったとき、そのお家で暮らせそうですか?介護は場所を取ります。また、種々の支えが必要です。そこで、介護仕様の家に増改築等する必要が出てくる場合があります。もっとも、増改築等の必要性はあるけどお金がかかって・・・といった場合もあるとは思います。このような要望に応える形で以下のような制度が用意されています。

 

住宅改修費支給

手すりの取り付け、段差の解消、滑り防止のための床材変更、引き戸への扉の取り替え、洋式便器への便器の取り替えなど、一定の種類の住宅改修については、介護保険よりその費用が支給されます。ご自身の負担額は1割負担です。18万円が支給限度額となります。

 

増改築費用貸付

自治体によりますが、玄関、廊下、トイレ、浴室、洗面所、台所、食堂、居間、居室等の増改築又は改造工事について、低金利での融資が行われています。

 

返済特例制度

バリアフリー工事や耐震改修工事などを含むリフォーム工事については、工事対象住居やその土地を担保に貸付を受けて、利子のみの返済を行い、死亡時に相続人が担保権実行により、または自己資金で一括支払いをする制度が用意されています。これは1,000万円が限度とされていますが、リフォームを考えるにあたっては検討に値する制度ではないでしょうか。詳しくは住宅金融支援機構にお問い合わせください。

 

その他の支援

高齢者タクシー料金助成

病院などに行くに際して発生する交通費は一部健康保険の対象となる場合はあったとしても、介護保険の対象となることはありません。タクシー料金は基本的に全額自己負担ということになります。

とはいえ、介護が必要な方が病院に行こうとするには自分で運転して病院に行くことが困難な場合があります。公共交通機関を使っても要介護具合によっては困難でしょう。このような場合に家の前まで来て病院まで送ってくれるタクシーは必要性が非常に高いということになります。そこで、自治体によりますが、一定額につき助成金が出る場合があります。タクシー代に限らずバス回数券やガソリン代などが支給される場合もありますのでお住まいの自治体にご確認ください。

 

生活福祉資金貸付

世帯の安定した生活の確保のために生活福祉資金貸付という制度があり、65歳以上の高齢者がいる世帯もその対象となっています。貸付資金の種類としては、生活費用等についての総合支援資金、疾病の療養、技能習得、住宅の増改築などの福祉費や緊急小口資金についての福祉資金などがあります。また、住居用不動産を担保にして生活資金の貸付も受けることができます。

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