話題のAirbnbの法律問題
- 2015/9/11
- 不動産関係
Airbnbって何?
Airbnbとは正確にはサービス名もしくは会社の名前なのですが、ある種の宿泊施設の総称ないしはその業態のことを指していることもあります。空き室など現在使っていない家屋を旅行者に宿泊施設として貸し出すサービスです。「民泊」と呼ばれたりもします。公式サイトでは以下のように紹介されています。なお、Airbnbのような類似のサービスを提供する他のサイトもあるようです。
Airbnb(「エアビーアンドビー」2008年8月創業、本社・カリフォルニア州サンフランシスコ)は、世界中のユニークな宿泊施設をネットや携帯やタブレットで掲載・発見・予約できる信頼性の高いコミュニティー・マーケットプレイスです。
アパートを1泊でも、お城を1週間でも、ヴィラを1ヶ月でも、Airbnbはあらゆる価格帯で世界190ヶ国34,000以上の都市で人と人とをつなぎ、ユニークな旅行体験を叶えます。世界一流のカスタマーサービス、成長中のユーザーコミュニティを抱えるAirbnbは、空き部屋を世界数百万人に披露し、収入に変える最も簡単な手法なのです。
世界中の旅行者が格安で宿泊施設を利用できるという点で非常に利便性の高いサービスなのですが、日本の法律ではみとめられているのでしょうか。主に問題になる法律は「旅館業法」という法律です。
旅館業法はどうなっているのか
法律にはその法律が定められた目的が書かれていることが多いのですが、旅館業法も1条に目的が記載されています。
この法律は、旅館業の業務の適正な運営を確保すること等により、旅館業の健全な発達を図るとともに、旅館業の分野における利用者の需要の高度化及び多様化に対応したサービスの提供を促進し、もつて公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
そして、旅館業を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない上、建物設備や営業方法に様々な規制が置かれています。旅館業に当たるかどうかは、「宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」であるかどうかにより判断されることになります。つまり、寝床を提供してお金を取ることを反復継続して実施している場合には都道府県知事の許可を得なければならないということです。もし、許可を得ることなく旅館業を経営すれば「6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処する」とされています。
現状は法的に問題あり?
Airbnbというサイト自体は違法といえるかというと、グレーだと思います。というのも、Airbnbは物件のオーナーが部屋に宿泊させるための手段を提供していますから、旅館業法違反の「ほう助犯」(犯罪を手助けする人)が成立する可能性はあります。ただし、法的にほう助の故意が認められるかなど種々の問題点はあるにはあるのですが、そうはいっても法律上問題ないとはいいにくいのではないでしょうか。
また、オーナーは旅館業法に違反している可能性は非常に高いです。旅館業法や建築基準法などの規制は、多数の人が利用、特に宿泊する施設という関係から厳格な規制を敷いています。施設自体の規制もさることながら、これを第2種中高層住居専用地域内では営業できません。Airbnbに掲載されている物件の多くが空き部屋などであることからすれば、これらの規制をクリアできている物件はかなり少ないと思われる上、許可を受けているオーナーがどれほどいるのか疑問です。Airbnbの形態からすれば許可を得ることは難しいでしょう。
さらに、飲食サービスまで提供するとなれば食品衛生法上の規制も及びますので、食品衛生管理者の設置なども行わなければならず、法律上個人が簡単に宿泊サービスを提供するのは困難なのが現状の法律なのです。
じゃあ捕まったりするの?
刑罰の適用がありえるのですから、場合によっては逮捕され刑罰が科されるケースは十分に考えられます。とはいえ、Airbnbのサイトをご覧になればお分かりになるかと思いますが、日本国内でも多数の物件が紹介されています。では、その全てが逮捕され裁判にかけられているのかというと現在そのようなケースはないようです。京都で何件か違法民泊を行っていたとして書類送検されたという報道がありましたが、起訴には至っていないところを見ると行きすぎに対する警鐘といった意味合いが強いのかもしれません。
大阪府で成立!民泊条例!
2015年になってから、国家戦略特区の特性を生かして、Airbnbのような民泊を認める条例が成立しました。国家戦略特区って何ぞや、という方はこちらの内閣府地方創生推進室をご覧下さい。
現在、大阪府と東京都大田区で民泊条例が存在します。ただし、国家戦略特区の特性を生かした以上、宿泊者は外国人に限ることになります。また、まだ条例は施行されていませんし、認定を受けなければならないので、無条件に今までの民泊が許容されるわけではなりません。むしろ、認められてない民泊は違法との判断がしやすくなる可能性もあります。
そして、条例で制定されてもまだ問題はあると考えています。マンションの空室の利用がおそらく多くなるであろうとは思うのですが、自分が住んでいるマンションを全く知らない観光客が出入りすることになった場合、既存住民はどう思うでしょうか?大田区では苦情窓口の設置という対策をとるようですが、問題山積みという状況ではないかと思います。
今回の条例制定は現状盛況なAirbnbに条例でむしろ制限をかけたとも考えられなくはありません。
国のレベルでの法律制定も含めて今後の議論が待たれるところです。
2018年3月追記
Airbnbを走りとして、活況といっていい状況となった民泊事業は、ついに国会を動かして民泊新法の制定や旅館業法の改正を実現しようとしています。民泊を合法的に行う手段が整備されてきているということであり、反面として、違法な民泊事業は厳しく取り締まられるようになっていくかもしれません。
2018年3月時点での民泊に関しては、こちらの記事をご覧ください。