どんなに注意していても落ち度あり!ここが変だよ過失相殺
- 2015/9/6
- 交通事故
過失相殺とは
過失相殺とは、交通事故などの不法行為によって損害を受けた人(被害者)が加害者に対して損害賠償請求するときに、加害者から被害者に対してする反論の一つです。
反論の内容としは、
「被害者にもこの事故を起こした原因となる過失(落ち度)があるから、被害者の損害全部を賠償する必要などない!」
というものです。たとえば被害者に生じた損害が総額1000万円だったが、被害者の落ち度が20パーセントくらいあるとされると、加害者が賠償するのは800万円でいいですよという理屈です。
そんな反論あり?と思う方もいるかもしれませんが、少なくとも日本の民法はこのような加害者からの反論を認めていて、実際の裁判や示談交渉の際も普通にされる反論です。
とはいえ、自分は十分に注意しているからそんな減額なんてされないから大丈夫、と思ったあなた!
とんでもない誤解です。
自動車を運転する以上、事故が起きればまず過失相殺はされるものと考えてもらった方がいいです。
過失相殺される場合、過失相殺されない場合
過失相殺されない場合としては、
・ こっちは信号を守っていたのに相手が赤信号無視した
・ 停止中に追突された
くらいだと考えた方がいいです。もちろん実際には、過失相殺されない場合ももっとあるのですが、立証の問題などが立ちはだかり、安心して過失なし前提で賠償の話を進めることができるのは上記2パターンくらいだと考えていた方がいいかもしれません。
たとえば
・ 相手が一時停止無視で衝突してきた
・ 直進優先のはずなのに相手が無理やり右折してきて衝突した
・ 相手がウインカーを出さずに進路変更してきた(相手はウインカー出したと言っている)
・ 相手が自転車でセンターオーバーしてきて正面衝突した
などの場合には、被害者側にも一定程度の過失相殺がされるのが普通です。どうです?マジかと思った方も多いのではないでしょうか?
でも、本当です。それくらい、過失相殺というのはよく行われるものなのです。
どれくらい過失相殺されるかはどうすれば分かる?
じゃあ実際に起きた事故がどのくらいの過失割合になるか(どの程度過失相殺されるか)、は誰が判断しているかというと、最終的には裁判所ということになります。
しかし、実際に裁判起こすまでおおよその過失割合も分からないとなると、過失についての争いだけで話し合いがつかずに裁判になってしまう可能性があります。
それはそれで、両当事者にも裁判所にも負担のあることですので、できれば一定の基準が欲しいところです。
その基準となるのが、判例タイムズと呼ばれる雑誌で東京地裁民事交通訴訟研究会が編集した「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」と呼ばれるものです。2015年9月現在、第5版が出版されています。
この判例タイムズで、私の主観的な数字ですが95%くらいの交通事故態様の類型が網羅されていて、それぞれに基本過失割合が決められています。
この基準のおかげで、過失割合を争点とする裁判はかなり減ったのではないかと思います(もちろん、それでも相当数が裁判になっていますが。)。
ちなみにこの本は、一般の方でも購入可能です。
こんな場合も過失あり?
この判例タイムズに掲載されいてる基準がどんなものかを知ってもらうために2つほど事故態様類型を紹介しましょう。
一時停止規制ある交差点(四輪車vs四輪車)
まず、自動車同士の事故で交差点、加害者は一時停止規制のある道路を一時停止せず進行、被害者は一時停止規制のない道路を進行、という場合です。割とよくある形態ですね。
この場合、被害者からすると、いや一時停止規制を無視している側が100%悪いだろと思うのも分からないではありません。
しかし、上の基準が定める過失割合は、両者減速せずの前提で、被害者20対加害者80です。加害者が減速していて被害者が減速していないとすると(一時停止規制の有無からするとこういうケースが多いと思うのですが)、被害者30対加害者70となります。
結構、減額されてしまいますよね。
センターオーバー(四輪車vs自転車)
次に、自転車がセンターオーバーして四輪車にぶつかってきた場合、過失割合はどれくらいになると思いますか?
センターオーバーされて正面衝突されたら避けようがないから、四輪車の過失は0と思ったあなた、残念!
この場合の過失割合は、四輪車50対自転車50です。
驚きですか?私も個人的には、まじか、と思わないでもないですが、自転車が四輪車に比べると交通弱者となるので(おそらく上記事故態様で大怪我するのは自転車の方でしょう)、その保護のためにこういった過失割合になっているのだと思います。
四輪車側からしてみると、かなりつらい認定であることは間違いないと思います。