店員に土下座謝罪を要求、法律上どうなるの?
- 2016/1/15
- diary
SNSで拡散!店員の土下座謝罪画像
SNSトラブルは後を絶ちませんが問題になったもののひとつとして店員の土下座謝罪する様子を撮影してツイートするというものがありました。しかも1件ではなく何度か同様の事件があったので、今回は土下座謝罪を強要したら法律上どうなるのかを見ていきたいと思います。
店側に落ち度があっても土下座謝罪を求めることはできません
多くの方は、土下座を求めることが正当化されることはないと思うのではないかと思います。法的にはそのとおりです。
「お客様は神様です」という言葉は一度は聞いたことはあるかと思います。もともとは舞台俳優の方が舞台に上がる際の心構えとして述べたものだそうですが、仮にもとの発言がこれらのお店での接客のあり方について述べたものであったとしても、土下座強要できるといったことにはなりません。
では土下座を強要するとどうなるか。
まず、土下座を強要することにより、強要罪、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。また、SNS拡散により威力業務妨害罪、名誉棄損罪、侮辱罪などが成立する可能性があります。さらに、店側や店員から民事上不法行為に基づく損害賠償請求される可能性もあります。
赤の他人に業務中すすんで土下座するようなことは実際はあまり考えられませんから、多くは脅し文句をつけつつ土下座するように言うのでしょう。これは店員ないしはお店の名誉に対して害を加える旨を告げて脅迫し、店員に義務のない土下座謝罪行為をさせるものですから、強要罪が成立することになります。「謝って、土下座して」と言うだけでは強要罪の成立可能性は下がりますが、何らかの条件を付けたり暴行を振るうかのような剣幕で言いよれば成立する可能性はあります。
次に、強要行為を店舗で行えばその場にいるお客さんはいなくなるでしょうし、店の外のお客も入り辛くなります。さらに、明らかに何らかのトラブルがあったと声高らかに宣言しているようなものです。以上のことからすれば店の営業が妨害されているといえるでしょうから、威力業務妨害罪が成立します。
また、土下座をさせたことが店員の名誉を棄損する行為になるかですが、これは微妙なところです。大勢の他のお客さんがいるところで土下座していることを見せしめにしたりすれば、名誉棄損罪ないしは侮辱罪にあたる可能性もあります。
さらに、土下座をしたという事実をSNSに拡散すると、公然と事実を適示して店員の名誉を棄損したといえますから、名誉棄損罪が成立する可能性は高まります。ファッションセンターしまむらの店員に土下座させてこれを撮影しSNSに拡散した事件では、客側に名誉棄損罪が成立し罰金30万円が科されています。また、投稿したことを捉えて威力業務妨害罪が成立することも考えられます。
また、刑事事件になるならないに関わらず店員個人や店側から損害賠償請求される場合もあります。
クレームは慎重に
クレームを入れたつもりがついついカッとなって怒鳴りつけてしまい、しまいには刑事罰に問われ、賠償までしなければならなくなってしまった。なんてことは誰もが避けたい事ですよね。
どうしてもサービス提供に問題があるといった場合はあると思います。場合によっては商品に法律上問題がある場合や、対応が違法な場合もあるかもしれません。したがって、クレームをいれること自体が悪だ、違法だ、というのも困ってしまいます。
何かお店に言いたい事があるならば丁寧に慎重にクレームを入れるようにしましょう。大きなトラブルであれば録音することをおすすめします。スマホをお持ちであれば録音機能が付いているはずですから、咄嗟の場合でもすぐに録音することができます。後のトラブルに備えることもできますし、録音していると思うことで自分も冷静にクレームを入れることができるかと思います。
店側のクレーマー対応
相手が丁寧にとまではいかなくてもある程度まともなクレームであればお店として丁寧に対応しましょう(なんて言われなくてもそうしているお店がほとんどでしょうが)。
問題はけんか腰や土下座強要など明らかに度が過ぎたクレームに対しては、厳とした対応を取るべきです。警察を呼ぶというのも手ですし、冷静に諭すことが効くようであればそれもいいでしょう。また、当然ですが土下座に応じることまでは必要ありません。店員だからといっても、あまりにも下手に出る必要はないでしょう。
あくまで冷静に拙かった点については謝罪し、その後の対応を説明することがトラブル回避につながるかと思います。