ゴルフ会員権の預託金って返って来る?
- 2015/12/30
- diary
ゴルフ会員権の預託金って返ってくる?
今も昔もゴルフは大人の趣味のひとつとして人気があります。近年は、幼少期からゴルフを始めたり、ママさんゴルファーが増えたりとそのすそ野は広がり、大人のオジサマだけの趣味とは言えなくなってきています。
スポーツですが基本的には走らなくていい(私のように下手くそな人は、周りに迷惑をかけないように常に走っている必要がありますが)という点で、誰でも始めやすいことに特徴があるでしょう。もちろん、それだけではなくゴルフにはゴルフの楽しさがあると思います。私自身もかなり下手くそではありますが、
そんなゴルフについて、会員権というものがあることをご存知でしょうか。
他の会員権があるサービスと同じように、会員割引があったり、コースの優先予約券があったりとしょっちゅうゴルフをする人にとっては必要となるものです。他にもゴルフ場主催の大会参加権などもあるようです。
このゴルフ会員権は既に会員権を持っている誰かから購入するか、新規の場合は預託金を納めなければなりません。また、この会員権には譲渡性があり、株式のように取引が行われています。
預託金というのは、ゴルフ会員権の最初の販売時に入会金とは別に支払わなければならないものです。そして、これを元手にゴルフ場の運営が行われています。
もったいない!ゴルフ会員権の預託金は返してもらえる?
ゴルフ会員権の預託金も、預託金というくらいですから、本来は一定の条件を満たせば戻ってくるものです。この「預託」を辞書で調べると金銭または物品を一時的に預けることとされています。預けたんだから返って来るのが当然です。
ゴルフ会員権の相場が高騰している場合は、いらないなら売ってしまえば損はしないどころか儲かることもありました。しかし、相場が下落すれば、売っても当初の入会金・預託金と比べて損してしまう可能性があります。
ここまでは株式と一緒ですね。この点について、株式は、株式を買い取ってくれるよう会社に請求できるシーンは法律上かなり限られています。一方、ゴルフ会員権の預託金と言うシステムは私営のシステムです。したがって、相場より低いのであれば元金を返してもらえばプラマイゼロになるのですから、返してもらいたいですよね。
そのため、一時期、ゴルフ会員権預託金の返還訴訟が頻発する事態になりました。
返してと言ってみたがゴルフ場の答えはNO
ゴルフ会員権の預託金を返してくれるようにゴルフ場側に言ってみると、多くの場合何らかの理由をつけて返してくれません。
契約当時の会則に据置期間が定められていればその期間の返還拒否には法律上の理由があります。5年の据置期間が定められていれば5年間は返してもらえないのです。
では5年経過していればすぐに返してくれるのかと言うと、次は据置期間を会則に従い延長して10年になったからあと5年は返せないと言ってくることがあり得ます。しかし、これは法律上の理由がない主張です。会則に、経営が厳しくなった場合は延長可能といった規定があったとしても、契約時に定めた5年から増加することはゴルフ場側の行為によって会員側のみが一方的に不利益な地位に立たされることになるのでいくら会則に定めてあっても認められないと考えていいでしょう。
他にもいろいろと理由を付けて断って来る可能性はありますが、大抵は法律上の理由がない主張であることが多いはずです。どうしても返してくれない、そんな背景をもとに強制執行を睨んでの訴訟が提起されることになります。
ゴルフ場の会社が変わったから、返してといえない?
ゴルフ場はなぜ拒むかと言うと、前述のように預託金で運営しているからです。預ったからと言って大事に銀行口座に保管しているわけではありません。したがって、数件の返還ならまだしもゴルフ会員の大半が訴訟を提起するに至ったらゴルフ場としては運営が成り立たなくなってしまうのです。
そこで、ゴルフ場はこの返還から逃れるために経営権を他社に譲渡したり、会社を分割して子会社に譲渡してみたり、新設会社に譲渡したりといろいろな方策をとってきます。
確かに、契約をした会社は譲渡す側の会社ですから、請求できるのもこの会社に対してのみです。しかし、明らかな執行逃れのためのこのような方策を取られては一方契約者の地位は不当に害されます。
そこで、判例は一定の要件を立てて例外的に請求できる場合を確立しています。要件としては、①預託金会員制のゴルフクラブの名称がゴルフ場の営業主体を表示するものとして認められていること、②譲渡人が用いていたゴルフクラブの名称を譲受人が継続して利用していること、③譲受人が譲受後遅滞なく当該ゴルフクラブの会員によるゴルフ場施設の優先的利用を拒否したなどの特段の事情がないこと、が挙げられています。
もっとも、他の法律構成によっても請求できる場合はあり得ますので、お困りになったら弁護士に相談することをお勧めします。
ゴルフ会員権の預託金はあなたのお金
自分のお金を預けたら2度と返ってこないというのはなんだかおかしな話ですが、返してもらうのには意外と苦労が大きいです。さらに耳をそろえて返って来るなんてことは珍しいかもしれません。場合によっては、ゴルフ会員権者がゴルフ場経営会社の破産を申し立てて回収するような事態にも発展しかねず、ゴルフ場もゴルフ会員権者も困った事態になっているのが実情です。
個人的にはそもそも預託金ビジネスというビジネスモデルの構造自体に問題があったのではないかと思いますが、既に預託金返還請求権を持っている人にとってはビジネス失敗だからしょうがないねーでは済みませんよね。
また、相続などでゴルフ会員権が財産にあることが分かったが相続人は誰もゴルフをしないのでそのままにしてあるケースなどもあるかもしれません。そのような場合にも、会員資格を返上して預託金の返還を求めることも検討に値するでしょう。
近時も、ゴルフ会員権預託金返還訴訟を集団訴訟で提起したことがニュースになっています(ニュースはこちら)。まだまだ終わらないトラブルといえそうです。