B型肝炎給付金の病態分類
B型肝炎給付金とは、集団予防接種によってB型肝炎に感染した可能性のある方に対して一定の要件の下で支払われる給付金のことです。詳しくは、こちらをどうぞ。
この給付金は、最大3600万円のもらえるのですが、その額は病態によって違ってくるという形になっています。
具体的には、
・死亡、肝がん、肝硬変(重度)の方については3600万円
・肝硬変(軽度)の方については2500万円
・慢性肝炎の方については1250万円
・無症候キャリアの方については600万円
と分類されます。ただし、除斥期間といって、不法行為のときから20年経過すると損害賠償請求できなくなるという制限が本来あるため、除斥期間経過後の方については
・死亡、肝がん、肝硬変(重度)の方は、発症(又は死亡)から20年経過していると900万円
・肝硬変(軽度)の方で、治療を受けたことがある方は、発症から20年経過していると600万円、治療を受けたことがない方は300万円
・慢性肝炎の方で、現在慢性肝炎の方又は治療を受けたことがある方については、発症から20年経過していると300万円、治療を受けたことがなく現在は慢性肝炎でない方は150万円
・無症候キャリアの方は、予防接種のときから20年経過していると、50万円
といったように給付金額が安くなっています。無症候キャリアの方は予防接種のときから20年、であるのに対し、その他の症状については発症(又は死亡)から20年となっている点には注意が必要です。なお、いずれの場合でも症状が進行して病態が変わった場合や一時的に治癒したが再発した場合などは、病態進行のときや再発時を基準として20年をカウントします。
いずれにしても、給付金の病態分類は、上記4種類というわけです。
ここで気になるのが、肝硬変の重度と軽度の区別と、慢性肝炎と認定される要件ではないでしょうか?これらがどのように分類されているのか見ていきましょう。
肝硬変の重度と軽度の区別
まず、肝硬変という認定のためには病理組織検査において肝硬変と診断されていることが必要です。
これを前提として、肝硬変の重度と軽度の区別は、
・肝移植をしているか否か
・90日間開けた2時点においてchild-pugh(チャイルド・ピュー)分類で合計点10点以上
のいずれかに該当するものが重度、そうでないものが軽度とされています。肝硬変の程度については、他にも肝障害度分類などもあるのですが、B型肝炎給付金訴訟においては、child-pugh分類が用いられているというわけです。
慢性肝炎は何をもって慢性肝炎か
厚生労働省が公表している「B型肝炎訴訟の手引き(平成24年2月再改訂)」によると、慢性肝炎であるというためには、「6ヶ月以上間隔をおいた2時点において、連続してALTの異常値が認められる場合」とされています。
ALT(GPT)とは、肝細胞内で作られる酵素のことで、体内でのエネルギー代謝の過程などで重要な働きをするものです。ALT(GPT)は、ほぼ肝臓細胞の中にだけあるものであり、肝臓が損傷すると血液中に溶け出してこの数値が高くなるというメカニズムです。ちなみにALTとは、アラニンアミノトランスフェラーぜのことです。従前GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミラーゼ)と呼ばれていたらしいですが、現在はALTが国際標準のようです。
では、厚生労働省がいう「ALTの異常値」とはどれくらいの数値をいうのでしょうか?
一般的に、ALTの正常値については、若干の幅はあるのですが、5~50の範囲であれば正常値とされることが多いように思います。
この点について、厚生労働省は、B型肝炎給付訴訟の手引きでは触れていないのですが、「標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」において、31以上を保健指導判定値、51以上を受診勧奨判定値としています。
ということで、B型肝炎給付金訴訟の関係では、31以上であれば異常値といいうるのではないかと思います。ただ、通常は、100以上になっていることが多いのであまり問題になりません。30前後の数字だと微妙、ということになるかもしれませんので、そのような場合には、何とか主治医の先生に「慢性肝炎」との診断をしてもらい、「病態にかかる診断書」に記載してもらうなどの方法を得て、あとは国側の総合判断に委ねるということになるでしょう。