確実に債権回収するために知っておきたい4つのこと
- 2015/8/18
- diary
権利があっても実現できなきゃ意味が無い
物を売ったらお金払ってという権利を有します。物を貸したら賃料払ってという権利を有します。お金を貸した返してという権利を有します。あげだしたらきりがありませんが、このよな権利を「債権」といいます。債権の回収を図ろうと請求しても、相手方がお金を支払ってくれなければ回収できません。回収できなきゃいくら債権を持っていても何にもならないですよね。しかし、どうせ回収できずに何にもならないからといって放っておけば時効により権利は消滅することになりかねません。
まず、この時効についてですが、現行の民法では債権の種類により時効期間が異なります。早ければ1年遅くとも10年が時効期間です。(近い将来民法の改正が予定されています。この改正により債権の種類に関わらず一律の時効期間となり、権利を行使することができることを知ってから5年、権利を行使することができるときから10年となる予定です。詳しくは知っておきたい民法改正の5つのポイントをご参照ください。)時効期間が経過し相手が時効によりその債権は消滅したといえばもはや回収は不可能です。
次に、相手が支払ってくれずに、時効期間が経過しそうだからと言っても、強引に相手から金銭を得るようなことはしてはなりません(自力救済禁止)。たとえば、力ずくで相手から通帳を奪うなどしてお金を回収すれば強盗罪に問われかねません。現実に存在する債権について支払えと脅すことも、その態様いかんによっては脅迫罪や恐喝罪の対象となります。自分の力業で回収するようなことは絶対やめましょう。刑事弁護の費用、結構かかりますよ。
もちろん、任意に交渉して支払ってくれるよう伝えることはできますが、脅迫とか恐喝とか言われないよう十分に注意しましょう。録音しておくと、証拠を残すだけじゃなく、自分が冷静になる効果もあっていいですよ。
いずれにしても、時効にかかる前に債権回収を図る必要があります。もちろん自分で交渉して回収を図ることもできますが、弁護士が間に入ることにより負担が極力かからない形で、迅速且つ的確な回収を図ることができます。もちろん、弁護士に債権回収を依頼すれば弁護士費用がかかります。費用倒れになるようなことは避けるべきですから、まずは相談していただくことをおすすめします。相談だけであれば無料でやってくれる事務所も増えています。
1に調査、2に調査、3、4がなくて5に調査
自分で回収を図るという方も、弁護士に債権回収を依頼された方も、相手がお金をもっていなければ全く回収が図れませんので、相手がお金や資産を持っているかどうかの調査がまず何よりも重要です。もっとも、その人がどれほどの資産を有しているかを確認することは決して簡単ではありません。弁護士に依頼したらすぐ分かるってわけではないんですね。弁護士も人の子というか、捜査権力を持っているわけではないので、そういう意味では弱小です。
ただ、一般人にはない武器として、職務場請求や23条照会などを使うことができます。まあ要するに、ちょっとだけ強制力のある調査だと思ってください。これらの方法で調査して簡単にわかるような場合もありますが、相手が資産を隠せばこれを発見するための調査がより必要になってきます。
まず、費用倒れにならないように相手にお金があるのか資産があるのかを確認すべきです。交渉・訴訟等の手続にだってお金がかかります。回収できる見込みがないのに交渉・訴訟等を初めても意味がないでしょう。この段階で相手方の資産状況を調べるには地道に役所等で書類により調査するか調査会社や探偵に依頼するかということになってきます。もちろん隠されていなければ本人や周囲の関係者等に聞くことによりわかることもあります。調査会社や探偵は公的機関でもありません。したがって、実力や信頼性は十人十色千差万別です。債権回収に精通した弁護士であれば適切な調査会社や探偵を紹介することもできるので、そういう意味でも弁護士に依頼するメリットはあるといえます。
訴訟段階に至っても準備段階での当事者照会や手続中の文書提出命令を用いて資産状況を確認することができます。また、裁判に勝訴して債務名義を得た場合であれば財産開示手続を用いることもできます。ただ、これら訴訟段階の調査であっても相手が開示するかはわかりませんから確実性が保証されるわけではありません。しかし、故意に隠匿すれば財産隠匿罪に問われることにもなりかねませんし、そういうプレッシャーの下で比較的資産状況が明らかになりやすいといえます。
いろいろと調査の手段を見てみましたが、大事なことは相手の資産をとにかく見つけることです。財産がなければ意味がないと言いましたが、意味がないどころか費用倒れにより損をすることになりかねません。徹底した相手の資産・財産調査が差遣回収の肝といっても過言ではないでしょう。
債権には、回収しやすさによって種類がある!
債権はそれ単独では相手に対して「お金を払って・返して」などと請求する、つまり言うことができるだけです。他方で、お金を貸したり家を貸したり車を買ったりといった契約を締結する場合には、抵当権などの担保権を設定するほか、保証人を付けたりするでしょう。また、たとえばアクセサリーなどについての売買契約を締結した場合には、売り主側は買い主に対する動産売買先取特権と呼ばれる法定の担保権を有します。聞き慣れない言葉かもしれませんが、担保権というのは、簡単に言えば他の債権者よりも先に弁済を受ける権利を有するということです。
このように抵当権や先取特権などの物的担保や第三者による保証などの人的担保がついている債権であれば、そこから他の債権者にリードして回収をすることができるという点で回収しやすいといえるでしょう。
もっとも、結局債務者がお金がない資産がない(あっても価値がない)となってしまえば、回収しやすい債権であっても回収できません。
破産すると言われたら?
破産とは、要するに債務者の資産をしばらくの生活に必要な分をのぞいて全部換金してそれを債権者に配ったら残りの債務はチャラにするという手続のことです。破産されると、債権者が回収を図ることが不可能ということになります。
もっとも、管財事件となれば債権者は破産債権者として訴訟手続に参加して配当を受けることができます。破産者が債務を全て履行できるのであれば破産する必要はないのですから、配当を受けることができても全額回収できることはほぼないです。全額どころか、通常配当があっても数パーセント程度です。管財事件だが配当なしということも普通にあります。
このように債務者が破産してしまえばもはや回収はできないないしは期待できないというのが原則です。もっとも、債権の種類によっては、破産手続内外で優先的に回収することが許されています。財団債権を有する場合や別除権を有する場合です。また相殺権を有する場合も回収できる場合があります。詳細については債務整理カテゴリで説明します。
なお、先ほどちょっと出てきた先取特権について言及しておくと、これも破産手続外で差し押さえ等をすることにより回収を図ることができる別除権となります。
とはいえ、結局破産外で債権回収できるといっても、破産者にお金に変えられるだけの資力がなければ意味がありません。資力がどんどん無くなっていく債務者もいますので、いかに早く回収するかというのも重要です。
債権回収のキモは、迅速に調査、迅速に回収、につきますね。