日本版クラスアクション(集団訴訟)制度を知ってますか?
- 2015/8/12
- 損害賠償
クラスアクションって?
クラスアクション、って聞いてピンとくるという一般の方は少ないと思います。経営者からすれば海外事業にも取り組んでいる方であれば聞いたことはあるという方もいるのではないでしょうか。
このクラスアクションとは和訳すると集団訴訟、団体訴訟などと言われたりします。そして、この制度が利用されるのは消費者被害の案件に限られるという特徴があります。つまり、消費者に被害が生じている場合に、あるいは生じるおそれがある場合に、消費者団体が消費者全体の利益のために訴訟の当事者となって訴訟を行う制度のことということになります。
たとえば、デパートで鞄を買う際、イタリア製有名高級ブランドの鞄として売られていたので購入したが、実際はイタリア製でもなければ有名高級ブランドを模倣した無名格安ブランドだったというようなことがあったとします。全国に展開するデパートなので信頼して買ったが偽物ならお金返してよという話になりますよね。ただデパート側が返してくれないとなったとき、鞄を10万円で買ったとしてもこれを訴訟を起こして返してもらおうとするのは費用倒れの可能性もあって泣き寝入りするようなことも起こりかねません。そこで、この鞄を購入した集団、クラスが一斉に一つの訴訟を提起すれば、費用倒れのリスクを回避できます。
実際、アメリカなどでは、この鞄を購入した集団が集団として結成してデパートに対してお金を返せと訴えるというようなことは実際に行われているものです。これがいわゆるクラスアクションです。集団全体でお金を返せといって実際に返してもらった後、集団内で分配するという仕組みです。
もっとも、日本版のクラスアクションは異なります。
日本版クラスアクションって?
日本にもクラスアクション制度は用意されています。しかし、先に制度が存在したアメリカ版クラスアクションなどとはほとんど違う制度となっています。
というのも、日本版クラスアクションは、これを提起しようとしても、被害者、先ほどの例で言えば鞄を買った人たちが提起することが認められていないのです。内閣総理大臣が認定した適格消費者団体というところのみが訴えを提起することができるとされているからです。つまり、これらの被害者はまずは適格消費者団体に被害を報告すると適格消費者団体が差止訴訟を提起してくれる可能性があるということになります。この点が日本版クラスアクションとアメリカ版クラスアクションの相違点であるといえます。
どんなときに使える?日本版クラスアクション
使える場面でも日本版クラスアクションはアメリカ版クラスアクションとは異なります。
先ほどのブランド鞄の事例で日本版クラスアクションで解決を図ろうとしても、現行法ではどうしようもありません。現在施行している法律でクラスアクションを起こせるのは、デパートが今でも当該鞄を販売している場合のみです。この場合は当該鞄の販売をやめるように訴えかけることができるだけで、自分のお金を返してもらおうと思えば、一人ひとりがデパートに対してお金を返すように請求するしかありません。
このように誰でも訴訟提起ができるわけではないうえ、そもそも差し止めたとしても被害回復には繋がりません。そこで、すでに立法はすんでおり、施行が待たれるだけの集団的消費者被害回復に係わる訴訟制度という制度があります。これも適格消費者団体のみが提起できるという点は変わらないのですが、企業側の違法行為を止めるという事前防止策ではなく、既に生じた被害の回復を目的としたものです。したがって、鞄を買った人たちが被った被害を回復し、代金を返して貰えるということになるのです。鞄を買った人が1000人であれば1億円もの被害額になりますが、一人一人は10万円になるので、集団で訴訟を提起することに大きなメリットがあるのです。
この被害回復訴訟制度は適格消費者団体が訴訟提起するという建前から、アメリカ版クラスアクションとはさらに違う点が生じています。というのも最初に訴訟提起した適格消費者団体が行為の違法性などを争い被害者集団の損害賠償請求権の存否を確定することとなっています。そして、権利の存否が確定すれば、あとは被害者が消費者適格団体に損害賠償請求権の存在を届け出て、結果として被害者側にお金が返ってくるということになっています。
このように権利の存否の確定と債権届け出の2段階に分けられた制度という点も日本版クラスアクションの特徴でしょう。
また、この被害回復は支払った代金の回復のみで、このような被害にあったことについての慰謝料までは請求できないので注意が必要です。
正直、日本版クラスアクションは消費者からすればアメリカ版クラスアクションよりも使いやすい制度とはいえないでしょう。立法の際に企業側からの反対があったからだなどと言われていますが、現状用意された制度を最大限利用することが今できることなのかと思います。被害額が少ないから、被害の立証が難しいなどとお悩みの方がいらっしゃいましたら、是非利用を検討すべきかと思います。このような点については現行制度でも十分に利用価値がある状況であるといえるからです。一度弁護士にご相談くださることをおすすめ致します。