知っておきたい遺留分の全て
- 2015/8/12
- 親族・相続
遺留分、それは最後の砦
遺留分とは、遺言によっても侵害できない相続分のことで、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められるものです。具体的には、法定相続分の2分の1が遺留分として認められます。ただし、直系尊属のみが相続人の場合は法定相続分の3分1とされます。
たとえば、配偶者1人と子2人のケースでは、法定相続分は配偶者が2分1、子がそれぞれ4分の1ずつですので、遺留分は、配偶者4分の1、子がそれぞれ8分の1ということになります。法定相続人が、配偶者と親1人の場合には、法定相続分は配偶者が3分2、親が3分の1で、遺留分は、配偶者3分の1、親6分の1となります。親2人だけが相続人の場合は、それぞれ2分の1ずつが法定相続分ですが、遺留分はその2分の1ではなく3分の1となるので、6分の1ずつが遺留分ということになります。
遺留分を侵害する遺言も直ちに無効というわけではなく、遺留分権利者が遺留分減殺請求の意思表示をすることで遺留分を取り戻すことが認められているにすぎません。
遺留分が認められている趣旨は、法定相続人としての期待を保護する点にあります。
被相続人が死んだ場合には遺産を一定程度引き継げると期待していても仕方ないと思える一定の親族には、最低限の遺産は残してあげましょうということですね。
その意味で、遺留分は、相続人にとっての最後の砦であり、これが侵害されている場合には遠慮なく遺留分減殺請求をすることを検討すべきでしょう。
遺留分はいつまで請求できるの?
遺留分減殺請求は、相続開始と遺留分を侵害する遺贈ながあったことを知った時から1年又は相続開始から10年の間にしなければいけません。基本的には、「えっ、遺言のせいでこれだけしかもらえないの?」とか「えっ、遺言で俺の取り分なし?」となったときから1年以内に遺留分減殺請求をするか否か判断し、するのであればその意思表示をしないといけないということです。
遺留分減殺請求の意思表示の方法については、特に法律上の制限はないので、口頭でも電話でも手紙でもFAXでもいいのですが、証拠として残すという意味では、配達証明付内容証明郵便で送っておくのが良いと思います。
遺留分の放棄
遺留分は、相続開始前にあらかじめ放棄することもできますが、遺留分が法定相続人にとっての最後の砦であることを考えると、簡単に放棄を認めるべきではないですよね。
そこで、民法も、相続開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可を受ける必要があることとしています。なお、許可の申立をする家庭裁判所は、被相続人の住所地を管轄する裁判所です。
他方で、相続開始後の遺留分の放棄については、民法上の規定はないのですが、いつでも自由にできるとされます。
これは、実際に遺留分減殺請求できる時点において、個人がそれを処分するのは自由であるし、相続開始前の遺留分の放棄のように放棄してから実際に遺留分侵害が分かるまでタイムラグが有って気持ちが変わる可能性などを考える必要もないからです。また、形式についても特にしばりはありませんので口頭で放棄することもできると考えられていますが、後々のために、書面で行っておく(あるいは行ってもらう)のがよいでしょう。