相続財産管理人をご存知ですか?
- 2018/8/22
- 親族・相続
相続財産管理人って何?
誰かがお亡くなりになったけど、相続人が見当たらなかったり、相続人全員が相続放棄した場合に、相続財産は宙に浮いてしまいます。しかし、受遺者や被相続人の債権者は相続財産に利害関係を有していますから、適切な管理がなされなければ不当な不利益を被ることになりかねません。場合によっては相続財産が隠されてしまうようなこともあり得ます。そこで、この相続財産を管理する必要が出てきます。その管理を行う人が「相続財産管理人」です。他にも、相続財産管理人が選任されるケースはありますが、この相続人がいないような場合がメインケースとなっています。
ちなみに、相続財産管理人は特別に利害関係を有する者であれば選任を受けることはできますが、およそ弁護士が就任することが多いといえます。
相続財産管理人の選任のしかた
相続財産管理人を選任する場合には、①相続財産に関しての利害関係人又は検察官が(民法952条1項)、②家庭裁判所に選任の請求を行い、③選任事由があって、④選任の必要性がある場合に、家庭裁判所がこれを選任することになります。
まず、①利害関係人については、相続人や受遺者、被相続人の債権者などが基本となりますが、葬式費用を支出した者や特別援護者なども利害関係人に含まれる場合もあり得ます。
次に、②家庭裁判所に申立書や戸籍謄本等の必要書類を揃えたうえで選任の請求をしなければなりません。勝手に相続財産管理人を名乗ったりしたとしても法的効力は認められないということになります。必要がある場合は家庭裁判所に選任の請求をしましょう。
次に、相続財産管理人を選任するための要件として、③選任事由があることが必要とされています。冒頭で触れたのは以下の(g)が選任事由になります。相続財産管理人は困った時はいつでも選任できるわけではないのです。民法上選任事由が定められていて、その事由に該当しなければ選任することはできないとされているのです。例えば必要性があると感じる相続開始後遺産分割までの間の相続財産管理人は民法上に定めがないので認められていません。
民法上選任が認められているのは、(a)排除確定前(民895条)、(b)承認または放棄確定前(民法918条)、(c)限定承認時に相続人が数人ある場合(民法936条)、(d)相続放棄後の相続の放棄をした者(民法940条)、(e)第一種財産分離時(民法944条)、(f)第二種財産分離時(民法950条)、(g)相続人不存在時(民法952条)、(h)遺言執行者がないときの遺言執行時(民法1010条)ということになります。
さらに、相続財産管理人を選任するためのもうひとつの要件として④選任の必要性が要求されます。上記の選任事由があっても、その案件において本当に相続財産管理人が必要でなければならないとされているのです。例えば、相続財産が僅かしかないような場合には必要性が否定されるでしょう。
相続財産管理人が選任されると
相続財産管理人が選任されると、まず相続財産に関する時効が6ヶ月間停止します(民法160条)。相続財産管理人は相続財産についての当事者でなく法定代理人ですから相続財産について訴訟提起するときは、相続人や相続財産法人に対して訴訟を提起することになります。
選任後、相続財産管理人は、財産目録の作成、財産状況の報告義務、封印・寄託・未登記不動産の取得登記・換価等の相続財産の保存に必要な一切の処分を行うことになります。これらを行うために相続財産や残りの相続人の調査を行うことになります。さらに、相続人不存在時には、所定の手続きに従った受遺者や債務者に対して弁済する義務を負い、最終的な国庫への帰属の諸手続きまで行わなければなりません。
相続財産管理の費用
まず、裁判手続ですから裁判所に収入印紙800円を納付しなければなりません。他にも、連絡用の予納郵券や、公告のための官報公告料3775円も費用としてかかります。
次に、相続財産管理人も職務として管理を行いますから(管理につき善管注意義務を負っています)、報酬が必要となります。親族が相続財産管理人に就いた場合にはその地位に基づいて行うものですから報酬は発生しませんが、弁護士などの専門職の方がこれを行う場合は報酬が発生します。相続財産から報酬が支払えるような場合には相続財産管理終了時に引かれるので気にする必要はありませんが、そうでない場合には選任の請求と同時に予納するのが通常です。20万円以上の予納が求められる場合もあります。
これらのことを考慮して,相続財産管理人の選任申立てを行うかどうか,その他の解決方法がないかなどを弁護士に相談されると良いでしょう。