減額できる?養育費・婚姻費用と公的手当やローンの関係。
- 2015/8/8
- 親族・相続
養育費・婚姻費用の算定方法
養育費や婚姻費用の額については、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を利用して定めることになります。
この算定表は裁判所自身が作成したものである点で、実務でも絶大な力を持っているわけでですが、これを絶対視して何が何でもこの通りに額を決めていると妥当な結果にならないことも多くあります。
特に、養育費や婚姻費用の額を決定するにあたってよく問題となるケースとして、どちらかが各種手当を受け取っているとかローンを負担していることなどをどのように金額に反映させるべきか(あるいはさせないべきか)ということがあります。
ここでは、この点についての実務の考え方を解説していきます。
子ども手当と養育費・婚姻費用
子ども手当は、正に子の養育に対する助成としての意味がありますから、養育費・婚姻費用の算定において考慮されても良さそうだと思うかもしれません。
この点について、絶対にこうだとは言い切れない部分がありますが、子ども手当は養育費・婚姻費用の算定においてそれほど考慮されていないのが実情だと思います。
たとえば、福岡高裁那覇支部平成22年9月29日決定は、子ども手当制度は、次代を担う子どもの育ちを社会全体で応援するとの観点から実施されるものであるから、婚姻費用の分担の範囲に直ちに影響を与えるものではないとしています。
ちなみに、この決定は、公立高校の授業料が無償化されたことも婚姻費用の算定にあたっては特に考慮しないとしています。
出産育児一時金と養育費・婚姻費用
出産育児一時金は、出産に際して支払われる手当です。これについては、一時金ですので、直接婚姻費用の額を定めるというものではなく、婚姻費用の額についての協議中に出産費用がかかると共に出産育児一時金が支払われたような場合に、どのように取り扱うべきかという問題になります。
この点について判断した審判例がありますので紹介しておきます。
横浜家裁平成24年5月28日は、「出産育児一時金は、少子化対策の一環等として支給される公的補助金であり、それが支給される以上、出産費用はまずそれによって賄われるべきである」としています。出産育児一時金は出産費用に当てられるべきと考えている点は、納得のいきやすい結論であると思います。
ローン負担と養育費・婚姻費用
養育費・婚姻費用について、自動車ローンや住宅ローンを払っていることは額の算定に影響するでしょうか?特に、婚姻費用をもらう権利を持っている側が自動車や住宅を使用している場合に問題になります。
この点については、少なくとも婚姻費用については、義務者が権利者の居住する自宅のローンを負担している場合には、権利者の総収入に対応する標準的な住居関係費を控除するものの、資産形成に関わることから全額控除するわけではないという取り扱いがされています。
たとえば、東京家裁平成22年11月24日は、「本件では義務者が権利者の居住する自宅の住宅ローンを負担しており・・・当事者の公平を図るには、試算結果から権利者の総収入に対応する標準的な住居関係費を控除するのが相当である(判例タイムズ1208号30頁以下参照)。」としています。
ちょっと分かりにくいかもしれませんので、たとえば子どものいない年収700万円の夫と年収200万円の妻が別居し、妻がこれまで通り家に住み続けているがその家の住宅ローン月額7万円は夫が払っている、というケースを考えてみましょう。
この場合、婚姻費用を支払う義務者が夫、権利者が妻ということになり、算定表からすると月額8万円程度が婚姻費用の額になります。そこで、夫としては、7万円は既に住宅ローンとして払っているから8万円から差し引いてあと1万円(住宅ローンを含めて8万円)を支払うということにすべきだ、と主張したいわけです。分からんでもない主張ですよね。
しかし、上記東京家裁の考え方は、妻側の総収入(年収200万円以外に収入がないなら200万円)を前提に標準的な住居関係費を控除する(差し引く)ことはするが、住宅ローン全額を差し引きはしない、ということです。標準的な居住関係費は手取り収入の3割程度などと言われることがありますが、これを前提にすれば年収200万円の妻の標準的な居住関係費はせいぜい4万円程度ではないでしょうか。
そうだとすると、8万円(婚姻費用算定結果)から4万円(妻の標準的な居住関係費)を差し引いた金額+7万円(住宅ローン)で合計11万円(直接妻に支払うのは4万円)となります。
住宅ローンを支払っている側としてはなかなか納得のいかない結論かもしれませんが、住宅ローンの支払いは資産形成の意味合いもあることなどから、このように考えられているわけで、結論としても妥当だと思います。
ただ、話し合いや調停の際に住宅ローンの支払いを完全に無視したような話が出てくることもありますので、住宅ローンの支払いを全く考慮しないわけではないということは頭に入れておいて損はないはずですよ。