女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定は違憲!

女性の再婚禁止期間規定は違憲!

2015年12月16日、日本で10個目の法令違憲の判断が下されました。それは、女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定についてです。これは業界的には結果は予想されていたと言え、むしろその理由付けに興味を持っていました。

ちょっと長々と法律の話をすることいなります。分かりやすく書いたつもりですが、長い!という方は「今後の対応」だけでも目を通していただければ嬉しいです。

民法の規定はどうなっていたか。

現行民法では、女性のみ、離婚してから再婚できない期間(再婚禁止期間)が定められています。この再婚禁止期間は6ヶ月とされています。ただし、もし離婚より前に懐胎していた場合には、出産のときから再婚することが認められています。

男性にはこの再婚禁止期間の規定は存在しないことから、これらの規定の趣旨は、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことあるとされていました。

もっとも、この再婚禁止期間規定は男女間の不合理な区別として差別にあたるする見解が昔からありました。

今回は、再婚禁止期間の規定により一定期間再婚することが叶わなかった女性がこの差別を回避するための立法を国会が行わなかったとして国家賠償請求を提起したものです。最高裁の結論としては、国会賠償請求は認められないが、本件規定は憲法14条1項に違反するものであるとの判断が下されています。

ちなみに現行法上の規定は下記のようになっています。

現行法上の再婚禁止と父性の推定

最高裁はこう考えた

さきほどの本件規定の趣旨からすれば、本件規定が再婚禁止期間を設ける目的には合理的理由はあると言い得ます。本件規定について争われた前回の最高裁も、今回の最高裁もどちらも本件規定の目的は合理的なものであるとしています。

しかし、DNA判定などの科学的判定を前提に父を定める訴えを提起できる範囲を拡大すれば、再婚禁止期間を設けずとも父性の推定の重複は回避できるので、目的の合理性は控えめに言っても薄れている、もっと言えば失われたとも言えそうです。

この点に関して、今回の最高裁は、この主張を退けています。内容としては、生まれてくる子の父が手続の間決まらず種々の影響があるから、なおも何らの手続を経ることなく父性を推定することは理由があるというものです。

とはいえ、女性にのみ再婚禁止期間を設けることの目的が合理的でも、その目的を達成するための手段が合理的であるとは限りません。

今回はこの手段が一部合理的ではないとの判断で、違憲だとされました。

すなわち青い網掛け中の点の網掛け部分は手段としての合理性はないけれども、点の網掛けのない100日間の再婚禁止期間は合理的であるとしました。

以下のような図が最高裁の判断ということになります。

最高裁による再婚禁止と父性の推定

図だけで説明すれば、1つ目の図の左の点の網掛け部分が圧縮されて右の点の網掛け部分が引っ張られた結果、青の網掛けと赤の網掛けの隙間がなくなったということになります。つまり、婚姻後200日と離婚後100日は妥当であることを前提に、先ほどの隙間の期間約80日は合理性がないということになります。つまり、再婚禁止期間は100日あれば計算上十分で、100日超過分については合理的理由がないのです。

さきほどの隙間の期間は、民法立法当時には、懐胎を知る上で医療や科学上必要な担保ともいうべき期間として必要と考えられていたようです。また、当時の諸外国の立法も考慮していたと考えられています。

しかし、現在の医療や科学技術の発展を考えれば、これらの期間を設けることが父性の推定の重複回避に関連性があるとはいえないように思います。また、諸外国でも再婚禁止期間を撤廃するなどの流れもあります。もっと言えば、妻が婚姻前から懐胎していた子を産むことは再婚の場合に限られないのに、再婚の場合に限って前夫の子の父子関係が争われる事態を減らそうとするのは合理的理由がないと言えるのではないでしょうか。

 

今後の対応

だらだらと再婚期間を100日に限る理由を見てきましたが、結論としては2つ目の図の通りです。

女性も離婚しても100日経てば再婚することができなければおかしいということです。

法務省は早くも全国の自治体に向けて再婚禁止期間100日で取り扱うように通知を出したとされています。タイムリーにも離婚後100日経過したが半年は経過していないという方で再婚を考えている方は各地方自治体に問い合わせてみてください。おそらく婚姻届が受理されるかと思います。また、民法は来年の国会での債権法改正が言われていますが、家族法分野である本件規定も合わせて改正されるのではないでしょうか。この時、再婚禁止期間自体を撤廃すべきだという意見が出てもおかしくありません。実際、先の夫婦同姓同様裁判官の個別意見の中では、100日以内であっても例外的に再婚を認めるべき場合がある旨のものや、例外があり過ぎるのだからもはや100日要件も撤廃すべきだというものもあります。

法的な効力はありませんが、今後の再婚禁止期間についての議論を考える上で一度見てみるのも面白いと思います。

私としては、そもそも父性の推定の重複を避けること自体にそれほど大きな意味があるとは思えないので、再婚禁止期間自体が撤廃された方が良いと考えていますが、ここはまだまだ意見が分かれるところかもしれませんね。

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