早く請求しないと損する?!婚姻費用の請求時期は?
- 2016/1/7
- 親族・相続
婚姻費用をご存知ですか?
離婚を考えていて別居しているけれど、生活が苦しい、という方であればぜひ婚姻費用というものを確認しましょう。この婚姻費用というものについてみていきたいと思います。
婚姻費用というと、結婚式にかかる費用のこと?と想像されるかもしれませんね。法律上、婚姻費用とは、「婚姻から生ずる費用」のこと、すなわち夫婦が通常の社会生活を維持するのに必要な生計費をいい、衣食住の費用・交際費・医療費・子供の養育費(子の監護費用)・教育費等などがこれに当たります。ざっくばらんにいえば、家族内での生活にかかる費用全般を指すでしょう。
婚姻により夫婦になったあかつきには、民法752条によると協力扶助義務というものを負っています。協力し助け合って生活しなさいということです。生活するにはお金がかかりますよね。そこで、民法760条は「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めました。これがいわゆる婚姻費用分担義務です。確かに、夫婦によっては家計を一緒にしている場合もあるかと思いますが、民法は夫婦別産制を定めていますし、家計を別にしている場合もあるだろうと思います。しかし、そんな夫婦関係であっても個別的な事情はさておき婚姻費用については分担するように法律は求めているのです。
そんなん夫婦の勝手じゃんとも思えますし、実際夫婦関係が上手くいっている限りは勝手にして大丈夫です。勝手にといっても片や自分のお金で生活し片や生活保護なんてことはできませんし、他の親族と比べて先ほどの協力扶助義務の要請は強いといわれています。
婚姻費用が問題になるのは別居しているとき
まあしかし、婚姻関係が円満にいっているときは、婚姻費用が問題になることはほとんどないでしょう。
では、いつ問題になるのかというと、婚姻費用分担義務が争われるのは主に婚姻関係が破綻して別居しているときです。法律上婚姻関係は継続しているが別居しているなどの場合に問題になるものです。もちろん、同居していても先ほどのように片方のみが困窮した生活を強いられているような場合もそのような生活を強いられている方が婚姻費用の分担を請求できる場合はあります。
婚姻費用はいくらもらえるのか、どのような手続を経ればいいのかということは今後の記事に譲りますが、簡単にいえば家族構成や互いの収入に応じて婚姻費用算定表を基準に当事者で決めることになりますし、当事者で決まらない場合は調停→審判という順に家庭裁判所において決めることになります。
今回は婚姻費用はいつからもらえるのか、ということを中心にみていきたいと思います。
婚姻費用はいつからもらえる?
婚姻費用というくらいですから婚姻した時から分担すべきと考えれば、片方のみが困窮した生活を強いられたときの分から請求できそうなものです。しかし、婚姻費用は通常分担を請求した時からもらえると考えられています。もし過去に遡って膨大な額の婚姻費用の分担が認められれば、請求される側にとってはこれにより生活が酷になってしまうからです。むしろ現在生活が酷だからと言ってもこれまで生活できていたのだから過去にさかのぼる必要性が高いとはいえないということのようです。
このことから、婚姻費用の分担はできるだけ早くしなければ損をする!と言われてきました。
婚姻費用の始期を請求時より遡って認めたケース
この点について、別居により相手が困窮することが容易に認識しえる状況で別居した場合にも婚姻費用は請求した時からしかもらえないという原則を貫くべきかということが裁判において争われました。
そこで、裁判所は遡ると言っても約1ヶ月分であって酷とはいえないうえに、別居するときに相手が子供を3人も連れているにも関わらず月収が約10万円であったのだから生活困窮を当然認識すべきだったとして過去分の請求を認めています(最高裁平成24年12月5日決定)。この最高裁の決定は、原則として請求時からというスタンスは崩さず、ただし上記のような場合には例外がありうることを示したものです。
ですので、やはり早く請求しなければ損をする可能性が非常に高いです。
過去に遡る期間が長くなればなるほど請求額も膨大になって支払わせるのは酷だという判断になりやすいといえます。事案に応じて過去に遡れる可能性があるという程度なのですから急ぐに越したことはないでしょう。それにやはり生活に困っているからこそ婚姻費用の分担請求をするのですからいち早く手元にお金が必要なのではないでしょうか。
婚姻費用はいつまでもらえる?
急がなければ損をする理由はもうひとつあります。それは支払の始まりではなく終わりも決まっているからです。婚
姻から生ずる費用ですから離婚が成立すればもはや分担請求をすることができなくなります。また、離婚しなくても別居が解消されれば、同居してもなお困窮な生活を強いられるといった例外的な場合を除いて分担請求をすることはできなくなります。できるだけ長い期間お金をもらえる方がいいでしょうから、やはり早く請求したほうがいいですね。