「氏」を巡る変わる、変えられる、変えたくない
- 2016/3/7
- 親族・相続
佐藤、鈴木、高橋、田中。そもそも「氏」とは?
上の4つは同姓同名探しと名前ランキングさんに掲載されている名字ランキングトップ4です。名字という場合もあれば、姓という場合もあり、氏という場合もありますが、現在では基本的に同一のものと考えていいようです。民法や戸籍法では「氏」が使われていますが、夫婦同「姓」と言うような場合もあります。歴史や起源には大きな違いがあるようですが、そこのところは割愛させて頂きます。
では、法律上「氏」はどのように扱われているのか見ていきましょう。
配偶者・子の「氏」の取り扱い
結婚すれば「氏」が変わるということは皆さんご存知かと思います。
多くの人が妻が夫の氏を称することになるかと思いますが、夫が妻の氏を称することも何ら問題はありませんし、どちらの「氏」にするか自由に選択することができます。夫が妻の氏を称した場合は養子として婿に入られたの?ということをお思いになる方もいるかもしれませんが、夫婦がどちらの氏に統一するかは法的には関係ありません。手続も皆さんご存知の通り、婚姻届にどちらの氏を称するかを記載して提出すれば戸籍上氏の変更が認められます。
法務省HPより抜粋
では、妻が夫の氏を称するとし、その後夫が死亡した場合はどうでしょうか。この場合は、婚姻前の氏に復することもできますし、そのままでいることもできます。
そのままでいたい場合は何らの手続も必要ありません。婚姻前の氏に復する場合に復氏届を提出することになります。
春日部市HPより抜粋
復氏届を提出すれば婚姻前の戸籍に戻ることにもなりますので、婚姻前の戸籍に戻りたくないといった場合には分籍届も同時に提出する必要があります。また、子供がいる場合には、これらの手続きを踏んでも子供の氏は変更されません。家庭裁判所に子の氏の変更許可申立書を提出の上、入籍届を提出する必要があります。
婚姻関係の開始により氏が変更されるのですから、終了すなわち離婚の場合も氏が変更されます。具体的には婚姻により氏が変更された方の氏が婚姻前の氏に戻ります。もし婚姻中の氏を引き続き使用したい場合には「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を出す必要があり、この提出期限は離婚から3ヶ月ですから注意が必要です。3カ月後も家庭裁判所に氏の変更許可を申立てることにより認められる場合がありますが、「やむを得ない事由」が必要です。子供に関しては離婚によって氏が変わることはなく、変える場合は復氏届の場合と同様の手続が必要となります。
法務省HPより抜粋
養子縁組における「氏」の取り扱い
再婚相手である配偶者の子(いわゆる連れ子)の氏名を変更したい場合、家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てた後に入籍届を提出する方法と、養子縁組による方法があります。前者の場合、再婚相手との親子関係が成立することなく氏を変更することができます。一方、後者であれば、再婚相手との親子関係が成立しますし、特別養子縁組であれば、戸籍上養子ではなく子と表示されますし、前婚の配偶者と親子関係が断たれることになります。
普通養子縁組は何歳でもできますが、特別養子縁組は原則として6歳までしかできません。
養子縁組による方法であれば何らの関係のない人の氏に変更することもできます。もちろん、養親の同意が必要です。これに関連して、養子縁組によるいわゆるネームロンダリングが横行しているという話もありますが、行政側の運用によりこのような不正を防止できるよう試みているようです。