労災保険給付における+α
- 2015/8/19
- 労働問題
労災補償給付の通常
労災補償給付で何を得られるかについては労災事故について知っておきたい7つのことにおいて基本的な点についてはご覧になることができます。
簡単に何がもらえるかといえば、療養(補償)給付(治療費など)、休業(補償)給付、障害(補償)給付(後遺障害に対する補償)、遺族(補償)給付(被災者死亡の場合の遺族への補償)、葬祭料、傷害(補償)年金、介護(補償)給付となります。また、+αに当たるものですが特別支給金については上記の記事をご覧ください。
ここではそれ以外の該当する人のみが給付を受けることができる二次健康診断等給付と労働福祉事業に関する労災補償給付についてみていくことにします。
注意すべき点は、以下の給付制度を利用する場合のほとんどが事前に所轄の各都道府県労働局に申請しなければ給付されないということです。あとから、「あ、この費用は給付されるんだ」と気づいても基本的には給付されないので、申請を怠らないようにしましょう。
二次健診給付
労働安全衛生法に定められた定期健康診断等のうち、直近のもの(一時健診)について、脳血管疾患及び心臓関連疾患に関連する一定の項目について異常の所見があると診断された場合に、労働者の請求により、二次健康診断及び特定保健指導が給付されると定められています(労働者災害補償保険法26条)。この給付は実費給付です。
上記項目により過労死等のリスクの有無を判断できることから、より慎重な診断を行うために給付金が支給されるということになります。過労死等については二次健診や保健指導による事前予防により防ぐことが期待できるとされるからです。この「一定の項目」とは、①血圧の測定、②血中脂質検査、③血糖検査、④腹囲の検査若しくはBMIの検査のことをいいます。
この二次健診はどこの病院でも受けられるものというわけではなく、労災病院等指定病院でしか行うことができませんし、1年度に1回までといった回数制限もあります。
二次健診や特定保健指導の内容としては、①血液検査、②尿検査、③頸部超音波検査、④胸部超音波検査、⑤医師・保健師・栄養管理士・健康運動指導士などによる保健指導となります。
詳細につきましては、厚生労働省発行の二次健康診断等給付の請求手続をご覧ください。
社会福祉事業に関する労災補償給付
労働者災害補償保険法において、通常の給付とは別に社会復帰祖促進等事業としていくつかの保険給付を定めています。利用できるシーンはある程度限られた場合に限られますが、かゆいところに手が届くといえるような内容となっています。詳細については厚生労働省が定めるとされていますが、基本的事項については法律により定められています。①社会復帰促進事業、②被災労働者等援護事業、③安全衛生確保等事業が基本的枠組みとなります。そして、労働者が受ける給付に関連するものはこのうちの①②となります。
以上のように法律には定められていますが、結局何がもらえるんだということがぼやっとしています。そこで、厚生労働省が定めるもらえる給付の詳細についてみてみましょう。
①社会復帰促進事業
外科後措置
労災保険の療養(補償)給付は、労災による傷病が治った場合には行われなくなってしまいます。そして、この「治った場合」とは完治の場合は当然ですが完治する見込みがもはやない場合もここに含まれるとお考えください。つまり、義肢等を装着するための手術や醜状軽減のための手術、神経症状等の消長施術などについては療養(補償)給付では補えないということになります。
しかし、上記のようなケースについて自費負担とされるのは納得がいかないですよね。このような費用について社会復帰が見込める場合であれば給付されるとされているのです。実費給付で何度でも利用可能ですが、利用できるケースはある程度限られているのでご注意ください。
この外科後措置を受けることができる者とは、労災保険の療養(補償)給付を受けた者若しくは障害等級に該当する障害を残す者であって、外科後措置により失った労働能力を回復できる見込みのある方、あるいは、醜状を軽減しうる見込みのある方に限られます。
義肢等の支給
労災により四肢を亡失し若しくは機能障害に陥った場合には義肢が必要ですよね。また、その他の体の各部位の亡失若しくは機能障害の場合にも補助器具等が必要となります。そこで、以下の補助器具については給付を受けることができます。また太字の器具については故意による故障を除いて修理することもできます。
義肢、筋電電動義手、上肢装具及び下肢装具、体幹装具、座位保持装置、盲人安全つえ、義眼、眼鏡(コンタクトレンズ含む)、点字器、補聴器、人工喉頭、車いす、電動車いす、歩行器、収尿器、ストマ用装具、歩行補助つえ、かつら、浣腸器付排便材、床ずれ防止用敷ふとん、介助用リフター、フローテーションパッド(車いす・電動車いす用)、ギャッチベッド、重度障害者用意思伝達装置
事前に申請した上で、承認を得て購入し、原則として自ら一度出費した上で費用を請求するという形式になります。もっとも、受領委任という形で当該費用を支払うことなく引き渡しを受けることもできます。
アフターケア
外科後措置と同様、労災により生じた傷病は治った後も後遺障害として残る可能性があります。この後遺障害に付随して疾病を発症させるおそれがありますから、これを必要に応じて予防しその他症状固定後の保険上の措置を講じる必要があります。いわゆるアフターケアと呼ばれるもので、以下の傷病に対してアフターケアの費用が給付されることになります。この給付に際しては事前に申請した上で健康管理手帳の交付を受け対象病院でアフターケアを受ける必要がありますのでご注意ください。
アフターケアの対象となる傷病は以下の通です。
せき髄損傷、頭頸部外傷症候群等(頭頸部外傷症候群、頸肩腕障害、腰痛)、尿路系障害、慢性肝炎、白内障等の眼疾患、振動障害、大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼、脱臼骨折、人工関節・人工骨頭置換、慢性化膿性骨髄炎、虚血性心疾患等、尿路系腫瘍、脳の器質性障害、外傷による末梢神経損傷、熱傷、サリン中毒、精神障害、循環器障害、呼吸機能障害、消化器障害、炭鉱災害による一酸化炭素中毒
詳細につきましては厚生労働省発行の「アフターケア制度」のご案内をご覧ください。
労災はり・きゅう施術特別援護措置
これも労災により生じた特定の傷病についての後遺障害につき、必要に応じてはり・きゅう施術を受けた場合の費用が1年に5回を限度として給付されることとされています。
その他
この他にも社会復帰の促進を図るために、以下のようなものについて給付を受けることができます。
在宅介護住宅資金及び自動車購入資金の貸付、振動障害者社会復帰援護金の支給、振動障害者雇用援護金の支給、振動障害者職場復帰促進事業特別奨励金の支給
②被災労働者等援護事業
特別支給金の措置
労災事故について知っておきたい7つのことにおいて見て参りました特別支給金はここに分類されます。
労災就学等援護費の支給
被災労働者の子弟又は、その遺族の中には、進学をあきらめ又は学業を中途で放棄せざるをえない場合が多いため、学資等の支弁が困難であると認められる者に対して支給されます。1人あたり以下の額が月額として支給されます。
小学生12,000円、中学生16,000円、高校生18,000円、大学生39,000円
労災就労保育援護費の支給
就学等援護金は保育園や幼稚園等に通う未就学児童をカバーしていません。もっとも、被災労働者が世話をすることが不可能といえるような場合にはこの労災就労保育援護費が給付されます。この不可能といえる場合は、障害等級1級~3級の障害(補償)年金、遺族(補償)年金、傷病(補償)年金を受けている場合に限られます。児童1人あたり月額12,000円が給付されます。
年金担保金の貸付
労災年金を受給している方のうち、子供の入学、結婚、医療等の資金を臨時に必要とする場合には、労働年金受給権を担保にして労働者健康福祉機構が貸付を行っています。給付ではありませんが、臨時金が必要な場合には将来の労災年金を担保に貸付を受けられるということです。貸付額は、年金の年額の1.2倍以内で、最低10万円から最高250万円までとされています。
労災ホームヘルプサービス事業(一部自己負担)
在宅重度被災労働者に対して、専門的な技術を身につけた介護人を派遣し、介護サービスを受けることができますが、これについては一部自己負担です。
休業補償特別援護金
休業補償は、休業以後3日間については労災保険から支払われず会社の自己負担とされていますが、会社側に支払能力がないなど被災労働者が支払を受けることができない場合に限ってはこの休業補償特別援護金の給付を受けることができます。