賭博は犯罪!でも何がイケナイ?
- 2015/12/4
- 刑事弁護
野球賭博が話題ですが・・・
プロ野球読売ジャイアンツの3選手が野球賭博を行っていたとして球団から解雇され、日本野球機構からも無期失格処分が下されました。これにより、日本はもとより日本野球機構と選手契約協定を結んでいる各国主要リーグでも野球をすることはできません。現在は、警察による捜査が進行中とのことです。
野球賭博の何がイケナイのでしょうか。今日の夕飯を賭けて仲間内で賭け事をする(賭け麻雀、賭けゴルフなどなど)はそれなりに行われている行為な気もします。とはいえ、そのことで会社を解雇されたりしたといったことはほとんどないのではないでしょうか。実際に、同じ野球賭博でも高校野球の勝ち負けを賭けの対象にして会社内で賭博行為が行われていたことがJR東日本から発表されました。しかし、こちらは厳重注意、再発防止に努めるで終わっています。
プロ野球の賭博行為はなぜこんなに厳しい処分なのでしょう。これまで野球しかやってこなかったといっても過言ではないようなプロ野球選手が野球を生業とすることはできなくなったのですから、大変重い処分であることはお分かりいただけるかと思います。それにはプロ野球には過去にも野球賭博が問題になったことがあり、社会問題化した背景もあるかと思います(俗に言う「黒い霧事件」)。大相撲でも同様の問題となりましたが、プレイヤーが賭博行為を行えば結果的には故意の敗退行為に出る可能性が高く、興行がなりたたなくなるという側面があります。応援している選手、チームが故意に敗退行為を行っていれば、応援する気も失せますよね。また、このような賭博には胴元が存在し、これが暴力団であることが多いといった背景もあるからです。暴力団の資金源になるケースもありますから、これは極力絶たなければならないということです。
大前提として、賭博行為は犯罪です
とはいえ、仲間内で賭けようと野球賭博や相撲賭博であろうと、賭博行為は犯罪です。刑法で以下のように定められています。
刑法185条(賭博)
賭博をした者は、50万円以下の罰金又は過料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。
刑法186条(常習賭博及び賭博場開張等図利)
① 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。
② 賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
まず、賭博とは、「偶然の勝敗によって、財物・財産上の利益の得喪を2人以上の者が争う行為」のことをいいます。圧倒的1位のチームと圧倒的最下位のチームの勝敗を賭ける場合であっても、「当事者の技量に差があっても、偶然的要素が存在する限り、賭博となり得る」とされていますから、賭博に当たります。そして、賭博行為に常習性が認められたり、いわゆる胴元であったりすればその刑罰は重くなるとされているのです。
しかし、賭博であっても犯罪にならない場合があります。それが、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」です。夕食を賭けたりするような場合であれば犯罪は成立しないのです。もっとも、金銭を掛ける場合にはこの場合には含まれないとされていますので、賭けゴルフや賭け麻雀もお金を掛ければ賭博罪が成立してしまうのです。
もっとも、世の中の喧嘩などが全て警察により逮捕され裁判にかけれらているのではないように、ほとんどの賭博行為は立件されていません。賭博額が高額であったり、胴元が暴力団であったりといったようなケースでなければ警察は動かないでしょう。とはいえ、賭け事が許されているわけではありませんが。
年により推移はありますが、年間で200件前後、平成25年は125件検挙されています。世の中で行われている賭博の数を想像すれば少ないなあという印象ではないでしょうか。
賭博はダメって言っても、競馬やtotoは?
引用した条文からいえば、競馬やtotoは間違いなく金銭を賭けていますから、賭博罪となりそうです。そして、これらの数額はとてつもなく巨額です。競馬を取り仕切るJRAの年間売り上げは2兆円を超えますし、totoだって1000億円前後の売り上げがあります。CMだってありますし、賭けるための施設も町中にたくさんあります。もしこれらが公営ギャンブルでなければ確実に立件されるに違いない賭博市場であることは間違いありません。
しかし、これらが賭博罪に当たりません(そりゃそーだ)。
法律上の根拠は、競馬法やスポーツ復興投票の実施等に関する法律にありまして、違法性が阻却されるとされています。賭博罪が罰せられる理由のひとつに副次的犯罪誘発の防止があります。国がこれを取り仕切れば大丈夫だということが背景にあるのです。他にも現在公営カジノの設立なども検討されていますね。
賭け事をしたければ「一時の娯楽に供する物を賭けたにとど」めるか、公営ギャンブルで、というのがルールですので気を付けましょう。
麻雀やパチンコは賭博にならない?
麻雀やパチンコはどうなる?と思われる方も多いと思います。
真正面から答えるならば、犯罪となります、と言わざるを得ない気がします。
2105年8月には、パチンコの換金について警察庁の担当者が
「パチンコで換金が行われているなど、まったく存じ上げないこと」
と発言したという報道がされて話題になりましたが、つまり建前というか真っ当にいえば、換金前提でパチンコをすることは賭博罪にあたるといわざるをえないのです。
また、麻雀で金銭を賭けることも同じです。
とはいえ、実際のところは、よほど大きな金額をかけたりしていない限りは、プレイヤーが逮捕されたりしているということはなさそうですので、過度に心配する必要はありません。
しかし、法律違反の現実をそのまま放置するのではなく、法律がおかしいのであれば改正や創設をして対応すべきなのではないかと思います。