加害者が飲酒や危険ドラッグを服用していても、保険は使える?
- 2015/12/25
- 交通事故
飲酒運転する車に轢かれてしまったが
交通事故に遭ってただでさえ最悪な状況なのに、事故時加害者は飲酒していたから保険が下りるのか心配で心配で。もし、これで保険が下りずにお金すら出てこないなんてことになったら踏んだり蹴ったりです。加害者が飲酒や危険ドラッグを服用していた場合に保険は使えるのか?これはかなり気になるポイントですね。結論からいうと、被害者に対する賠償保険は出ますので、その点では心配ないということになります。
まず、飲酒運転は厳罰化がなされたりと撲滅運動が盛んですが、実際の件数はどうなっているのでしょうか。警察庁の資料を見てみましょう。
上記リンクの「警察庁交通局配布資料 飲酒運転事故関連統計資料」から一部抜粋してきました。ピーク時からすれば6分の1と激減ともいえる状況です。とはいえ、人が車を運転するのをやめるか酒をやめるかしない限り0ということにはならないかと思います。そして、1件でも存在する以上、被害者は必ずいるといっていいでしょう。
加害者の刑事上及びに保険上の扱い
飲酒運転を起こした加害者は刑事上どのように扱われているのでしょうか。刑事罰に関しては自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律に規定されています。
もともとは刑法の業務上過失致死傷罪などで処罰されていましたが、近年、刑法から独立して特別法として規定されることになりました。自動車運転死傷行為処罰法2条1号、3条1項に規定されていまして、酩酊運転致死傷罪・薬物運転致死傷罪、準酩酊運転致死傷罪・準薬物運転致死傷罪が成立します。また、免許も取り消され3年間(死亡させた場合は7年間)再取得することができないという行政処分も下されます。
では、保険上はどうなっているのでしょうか。交通事故の場合、加害者本人も怪我をしたり、車が壊れたりと損害を負うケースが多いですが、これらについて保険金が下りることはありません。医療保険すら下りません。これが勘違いからか、「飲酒運転の場合は保険が下りない」という認識を持たれている方がいらっしゃるかもしれませんが、冒頭で述べた通り、そんなことはありません。
被害者の被害額は保険から出る!
飲酒運転の場合は「加害者には」保険が下りない、が正確な認識です。「被害者」にはちゃんと保険が出ます。
まず、加害者側の自賠責保険から120万円を限度として被害者に支払われます。さらに、加害者が任意加入している対人賠償保険からも支払われますし、被害者が任意加入している人身傷害保険からも支払われます。もちろん、こちらの言い値が出るわけではありませんが、被害者としては通常の交通事故の場合と変わりありません。むしろ、加害者の行為の悪質性により慰謝料増額の可能性もあります。
危険ドラッグを服用している場合も同様です。
法律上は「薬物」としか規定されていませんが、薬物の影響で運転が困難な状態もしくは支障が出るようなものであればここに含まれるといわれています。覚せい剤、麻薬、大麻、あへんといった所持・服用のみで刑罰の適用があるような薬物はもちろん、脱法状態にある危険ドラッグでも上記のような場合であれば「薬物」になります(なお、危険ドラッグも規制外と言われても、実際は医療品医療機器法違反であったり、各都道府県条例違反で問われたりします)。
とはいえ、このような飲酒運転や薬物運転の場合には加害者には保険適用がなく、被害者には保険適用があるといった状態が認められていることに疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
これは、保険制度自体がその制度目的が被害者救済にあるからです。車を運転する全ての人が、賠償能力があるわけではありません。場合によっては数千万、数億円といったことにもなる交通事故の損害額をぼんと支払えるという方はかなり限られているかと思います。車を運転する以上事故はつきものといえるのに、事故により多大な損害を被った被害者は相手方の資力次第で支払を受けれたり受けられなかったりといったのでは困ったことになるからこそ、保険制度は存在するのです。
それなのに、加害者が飲酒していたなどの事情で被害者が救済されないということになると、これはおかしいということです。
したがって、加害者が飲酒していたという偶然の事情によって被害者が救済されないということは起こらないようにしようという制度になっているわけです。