個人事業主(自営業)には休業損害は出ないのがフツー?
- 2015/8/8
- 交通事故
損害の立証は被害者の責任
交通事故の被害者側の代理人をやっていて困る場面の1つは、損害の立証ができるだけの資料がないときです。
交通事故については、被害者保護の観点から、加害者に過失があったことについては被害者が立証する必要はなく、加害者側が無過失であったことを証明しない限り過失があったものとして扱われることになっています。
しかし、その交通事故から具体的にどのような損害が発生したかについては、被害者が立証しないといけないのです。
ところが、この損害の立証というのはいうほど簡単ではありません。立証したというためには、裁判官が「十中八九確かだろう」という確信を得られる程度の資料を提供する必要があります。
この損害の立証が問題となる場面として多いのが、個人事業主(自営業)の方の休業損害と逸失利益です。
今回は、休業損害の話をしたいと思います。
休業損害、どうやって立証すれば・・・
個人事業主(自営業)の方の休業損害は、何を使って立証すればいいのでしょうか?
確定申告書じゃないの?と思ったあなた、正解です!
正解なのですが、まず多いのが確定申告をそもそもしていない人が結構多い印象です。こうなると立証が結構大変です。帳簿などがしっかり付けられていれば確定申告してなくても何とかなるのですが、帳簿を適正に付けるというのはある意味で確定申告よりもレベルが高いので、付けている人はほとんどいません。
そうすると、請求書やら通帳やらありったけの資料を引っ張りだして収入と支出を裏付けていかないといけないわけですが、結局十分な資料が得られないことも多いのが実情です。
また、確定申告はしているんだけれども節税のために経費をかなり計上して所得がかなり少なくなっているケースもあります。
これも、「いや実際の所得はもっとあります」という主張をしてもいいのですが、結局確定申告が無い場合と同じような資料を用意できるかどうかが問題になり、うまくいかないケースの方が多いです。
とはいえ、じゃあ休業損害0円なのって話になりますが、必ずしもそういうわけではありません。
事故にあって怪我している以上、多少なりとも損害があったのではという一応の推測は働きますので、できる限りの資料をもとに一生懸命主張すれば、いくらかの休業損害が認められることの方が多いと思います。
ただし、裁判でもそうかというと必ずしもそうではないです。特に判決となると、かなりの資料がなければ「十中八九確かだろう」と思わせることは難しいからです。
こうやって算定、個人事業主(自営業)の休業損害
では、確定申告について割ときっちり申告している方の場合は、どうやって休業損害を計算するのでしょうか?
本来的には、交通事故によって休業を余儀なくされたこと、その休業でいくらの損害が生じたのかを直接立証できるのが一番いいのですが、それはかなり難しいです。
そこで、実務では、交通事故前年の確定申告がある場合には、これを使って、ある意味で擬制的に休業損害を算定しています。
その算定式は、
(売上-流動経費)÷365日✕休業日数
です。
(売上-流動経費)の部分は、(所得+固定経費)と言い換えても大丈夫です。
光熱水費などの流動経費は休業していれば発生しないが、家賃などの固定経費は休業していようが発生してしまう経費だという発想から、上記のような計算式になるわけです。ちなみに、逸失利益の計算においては経費は完全に無視され所得のみを基礎収入にすることになります。
また、休業日数を何日とカウントするかは、怪我の内容や入通院期間などを考慮して、ケースバイケースと言わざるを得ないのですが、一番多いムチ打ちのケースでいえば、30日~60日くらい認められれば悪くない方だといえるのではないでしょうか。