むち打ちになったら知っておきたい14級と非該当の境界線
- 2015/9/11
- 交通事故
交通事故示談金や賠償金は、後遺障害等級の有無で大きく変わる
交通事故による損害賠償額は、後遺障害の有無で金額が大きく変わります。これは、後遺障害等級が認定される場合には、後遺障害部分の損害として、後遺障害慰謝料と逸失利益が加わるためです(極めて重度の後遺障害を遺した場合には将来介護費なども加わります。)。
この「後遺障害の有無」とは、ほぼ「自賠責後遺障害等級の認定の有無」と同義です。
自賠責で後遺障害の等級が認定されていない限り、示談交渉において保険会社や加害者側代理人弁護士が後遺障害についての賠償を認めることはほぼありません。また、裁判所も、建前としては、自賠責の等級認定に縛られないということになっていますが、現実には等級認定されていない後遺障害についての認定は非常に慎重です。
ですので、後遺障害の等級が取れるかどうかは、最終的な示談金や賠償金の額に大きく影響します。これは、交通事故外傷で最も多いむち打ち症になった場合でも同様です。
むち打ち症で認定される可能性のある後遺障害等級は、14級、12級のいずれかです。もちろん、痛みなどが残っていて医師に後遺障害診断書を書いてもらっているのに等級非該当(認定なし)となる場合もあります。
今日は、この非該当と14級の認定の差は何で決まるかについて述べます。なお、12級と14級の違いも気になるところだとは思いますが、それはまた別の機会に。
むち打ちで14級を取るために
むち打ちで14級が認定されるのは、自賠責後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」に該当すると判断された場合です。
ただし、「局部に神経症状を残す」場合すべてで14級の認定が受けられるわけではありません。
現在の医学では、局部に神経症状が残っているかどうかを客観的に立証することができない場合も多くあるのです。そこで、自賠責の等級認定においては、「局部に神経症状を残す」とは、
・ 医学的に整合的な説明ができるもの
のことをいうとされています。
ちなみに神経症状に関して12級が認定される場合は、「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされていますが、実際には頑固かどうかではなく
・ 医学的に証明できるもの
かどうかが判断基準になっています。痛みがあることを医学的に整合的に説明できるだけではなく、客観的に証明できれば12級というわけです。
話を戻して14級ですが、じゃあ結局「医学的に整合的な説明ができる」ってどんな場合をいうのかということになりますよね。
これは結局、自覚症状、治療経過、医師の意見を総合考慮して判断するしかありません。もう少し具体的にいうと、整形外科への通院頻度、通院期間、症状の一貫性、画像についてレントゲンだけでなくMRIを撮っているか、症状は「常時」あるものか、年齢、事故の衝撃は強いか弱いか、症状が医学的説明に整合するか、などを見ていくことになります。
ここから先はすべて私の経験に基づく推測で書いていますdので、細かい部分の正確性は保障できないのですが、大筋としては間違っていないと思います。
最重要!通院期間と通院頻度
上に書いた要素の中で最も重視されるのは、通院の期間と頻度です。
期間が4ヶ月未満だとむち打ちで14級の認定はまずされないですし、5ヶ月未満でも厳しい印象です。14級を目指すためには半年以上の通院はあったほうがよいでしょう。
また、この通院は可能であれば整形外科、そうでなくてもリハビリ科などのある病院である必要があります。ときどき、整形外科にほとんどいかずに整骨院、接骨院、鍼灸院などに熱心に通っている方がおられるのですが、そのような方の場合、14級の認定はかなり厳しいです。
もちろん整骨院、接骨院、鍼灸院などは遅くまでやっていることもあるし、実際に効果があることも多いと思います。しかし、自賠責の等級認定にあたっては、この点はほとんどプラスにはならないのです(マイナスになるわけではありませんし、何も通っていないよりはマシなのですが、その程度だということです。)。
ですので、整骨院、接骨院、鍼灸院などに行くことは止めませんが、併せて必ず整形外科にも行っていただきたいところです。
次に通院頻度ですが、これは一概にいえないのですが、週に1回程度だとちょっと少ない(=14級認定されにくい)感じがします。週に2回〜3回くらいは通院していた方がいいです。
このような通院リハビリができる病院を探して通院されるのが良いでしょう。
MRI撮影
むち打ちになった場合、ほぼすべての医師がレントゲン撮影はするのに対して、MRIを撮影することはそれほど多くありません。
しかし、MRIを撮影しているか否か、またその撮影の結果、脊椎などに変性所見が認められるか否か、もむち打ち14級認定には重要です。
お医者さんとしては、MRIを撮ったからといって撮らない場合より有効な治療ができるわけではないので、積極的にMRIを撮ってくれるわけではないのですが、等級認定についてはMRI撮影が割と重要な意味を持っているところがありますので、そういった観点からお医者さんにお願いをして、MRIは是非撮ってもらいましょう。
症状の一貫性
症状の一貫性はあるのが前提であり、これがないと一気に等級認定が厳しくなります。
たとえば、事故直後は首が痛いと訴えていたのに、3ヶ月後くらいから徐々に腰が痛いという訴えに変わり、半年通院後に腰の痛みについて14級の認定を狙えるかというと、まず無理です。腰の痛みと交通事故の因果関係が不明だと判断されているのだと思います。
この点について、最初に痛めた首をかばって生活していたために腰が痛くなったのだろうと説明してくれるお医者さんがいます。それはおそらくその通りなのだと思いますが、自賠責後遺障害等級の認定や損害賠償の観点からは、残念ながらそのような説明だけでは因果関係を繋げられないのが普通なのです。
ですので、後遺障害等級の認定可能性のある症状は、交通事故後遅くとも1ヶ月以内に出てきておりそれがカルテや経過診断書などの記録上に現れている必要があるでしょう。
症状が常時あるものか
これも重要です。後遺障害等級認定の際には、後遺障害診断書という自賠責が定める書式があるのですが、この後遺障害診断書には、医師に自覚症状を記載してもらう欄があります。
たとえば、この自覚症状欄に「天候が悪くなると首に痛みが出る」とか「走ると腰に痛みがでる」とか、「寝起きに首と腰が痛む」のように記載されていると、14級の認定は一気に難しくなります。
これは、自賠責が定める後遺障害の定義の問題なのですが、自賠責は、「常時」存在する症状を後遺障害として等級認定しているので、「常時」あるとはいえない症状についてはそもそも等級認定から外してしまうのです。
ですので、後遺障害診断書は、いろいろと注意すべき点もあるのですが、この自覚症状の欄は実はかなり重要です。「いつも痛いけど天気が悪と特に痛むんですよね〜」とお医者さんに伝えていたとしても、後半部分がお医者さんの印象に残ってしまって上記のような記載になってしまうこともないわけではないので、自覚症状欄は、後遺障害診断書を自賠責に提出する前に必ず確認すべき部分です。
交通事故の衝撃の強弱
これは何となく分かると思いますが、交通事故の衝撃が大きいほど14級認定には有利になります。ただし、衝撃が弱いと思われる交通事故でも14級が認定されるケースもありますので、これだけで等級認定の有無が決まるほどではありません。
しかし、交通事故の衝撃が強いケースであれば、等級申請に際して刑事記録を提出したり物損資料を提出したりするのは一つの手ではないでしょうか。
年齢
これも意外と関係しているように思われる要素です。若い人ほど回復力が強いと考えられているのか、若い人の方が等級認定されにくいように思います。
症状の医学的整合性
たとえば、首を痛めて手に痺れがでることは医学的に整合的に説明できますが、腰を痛めて手に痺れがでることは医学的に整合的な説明はできません。
このように医学的に整合的な説明(立証まではいらないのですが)ができない症状については、14級の認定は厳しいでしょう。
症状固定後の通院
これも見られているケースがあります。たしかに、これまで週3回通院していたのに症状固定した直後から全く通院していない人よりも、症状固定後に頻度は減ったとしても通院を続けている人の方が痛みなどの症状が残っているのかなと思いますよね。
症状固定後は治療費が加害者や保険会社からでないため、被害者負担で行くしかないのですが、健康保険を使えば経済的にはそれほど負担はないと思います。
お体のためにも、後遺障害等級を取るためにも、症状固定後の通院は続けた方がいいのではないかと思います。