仮差押について本気で押さえておきたい3つのこと
- 2015/8/18
- diary
仮差押(通称、カリサシ)って何?
お金を払えって裁判を提起しても、最終的に相手がお金をもってなければ勝訴判決も絵に描いた餅です。最初から資産がないなら「調査しとけ」って話で終わりますが、納得いかないのは、裁判中に相手が資産を食いつぶしてしまったような場合です。裁判なんて長くかかる手続しないと強制執行させてくれないことにしちゃって、その間に相手が資産食いつぶしたり隠したりしたらどうすんの?!
そう思うのは当然ですよね。裁判による解決を図る場合には数カ月から場合によっては1年以上かかることもあります。そこで、その期間に相手が財産を食いつぶしたり隠したりすることのないように、相手の財産を保全しておく必要があります。
裁判の決着がつく前に、迅速に相手方の財産を凍結し、裁判が終わった後の回収を容易に行うための準備があればいいですよね。それが、仮差押(通称、カリサシ)です。
裁判提起後(もしくは提起後一定期間の間に)相手が財産を処分しないように申し立てる手続ですから、申し立て前に相手に分かってしまっては効果が大幅に減少してしまいます。密行性が必要とかいわれる部分です。
さらに、カリサシした財産が実はなかったとなってしまっては後述の担保金が無駄になってしまいかねません。カリサシする順序や容易さも困難な判断を伴います。自分でやるっていうこともできなくはないのですが、通常の裁判以上に難しいと思います。というか弁護士でもやったことない人が実は結構いると思います。
カリサシしたい!という方、というか相手に資産あるのでちゃんと確保しておきたい、という方は、弁護士に相談してください。
仮差押に必要なもの
この便利なカリサシにも、デメリットはあります。それは、担保金を支払わなければならないということです。そして、この担保金、決して安いものではないです。たとえば、お金を貸した人が5000万円の不動産を仮差押えしようとすれば、500万円~1250万円の担保金を支払わなければなりません。
つまり、お金がない債権者にとっては、どんになにカリサシが魅力的な制度であっても利用できないということになります。この担保金がいくらになるのかというのは裁判所が独自に判断するといった仕組みになっています。もっとも、ある程度どのくらいかかるのかということはこれまでの統計等から知ることはできます。それが以下の表になりますが、あくまで目安です。色々な要素で増減額されます。しかし参考にはなるでしょうし、実際この幅に収まることも多いです。
目的物 | ||||||||||
債権 | 自動車 | |||||||||
動産 | 不動産 | 預金 給料 | 敷金 補償金 預託金 供託金 | その他 | 登録 | 取り上げ | 併用 | |||
債 権 | 手形金・小切手金 | 10-25 | 10-20 | 10-25 | 10-20 | 10-25 | 10-20 | 15-25 | 20-30 | |
賃金・賃料・ 売買代金・その他 | 10-30 | 10-25 | 10-30 | 10-25 | 10-30 | 15-25 | 25-30 | 30-40 | ||
損害賠償 | 交通事故 | 5-20 | 5-15 | 10-25 | 5-15 | 5-20 | 5-15 | 10-20 | 15-25 | |
その他 | 20-30 | 15-30 | 25-35 | 15-30 | 20-30 | 15-25 | 20-30 | 25-35 | ||
詐害行為取消権 | 20-30 | 15-35 | 20-40 | 15-35 |
※数値は目的物の価格に対する担保額の比率(%)です。
※大阪弁護士協同組合出版委員会『平成24年度 訴延日誌』(全国弁護士協同組合連合会、2011年)から抜粋
仮差押が刺さった先に待つもの
カリサシは「仮」の差押えです。つまり、「仮」じゃない差押えを行って債権の回収を図ることが本来の目的です。カリサシはあくまで予防策であって、これをしたから直ちにお金を回収できるわけではありません。カリサシをしておけば裁判において勝ったときに確実かつスムーズに債権を回収できるというのがカリサシの効果です。
もっとも、仮差押えの効力が失われる場合があります。それは相手が倒産手続を開始した場合です。破産手続や民事再生が開始されれば、仮差押えにより財産の凍結の効力は失われてしまいます。もちろん、効力が失われたからといって相手が好き勝手に財産を処分ができるようになるわけではありません。倒産手続が開始されれば基本的に倒産した者の財産はあなたを含む全ての債権者のために存在することになります。
あなたも倒産手続に参加して配当を受けることが可能となる場合があります。
しかし、破産の配当というのは雀の涙よりも小さなものですから、破産されてしまうと債権者としては大泣きするほかありません。せっかく、カリサシまでしたのに・・・ということになりますから、相手が破産するかどうかなども注意深く観察しておかないといけません。
このように、相手方の倒産によるリスクや担保金が高額であることなどカリサシももちろん全能とはいえません。しかし、ケースによってはカリサシは絶大な効力を発揮します。利用するかしないか、またどうすれば利用できるかなどは、弁護士に相談し、カリサシだけでなくあらゆる回収手段を検討して、有用な場面でカリサシを利用することによって確実な債権回収を図りましょう。
あなたのカリサシが刺さることを祈っています。