パワハラについて、加害者も被害者も知っておくべき5つのこと
- 2015/8/8
- 労働問題
止まない嫌味、それはパワハラ。
日本の労働環境で問題となる代表的なものとして、残業代、働き過ぎ、不当解雇、ハラスメント被害があります。
ハラスメント被害のうち、セクハラと並んで問題となるのがパワハラ(パワーハラスメント)です。パワハラも近年では注目を集めており、攻撃型、強要型、妨害型、否定型など、かなり類型化されてきた感がありますが、基本的には上司からの嫌がらせやいじめのことをパワハラだと言っていると考えて頂いて構いません。
パワハラは民法上の不法行為であり、刑事上も、強要罪や名誉棄損罪、侮辱罪になりうるだけでなく、被害者が追い詰められて精神的な障害を来した場合には傷害罪などになる可能性すらあります。
パワハラ、それは会社の責任。
パワハラは、それを行う上司が民事上や刑事上の責任を負わされるのは当然ですが、これを発生させてしまった会社側にも民事責任を追及できる場合があります。1つは、パワハラした奴を雇っていることで利益を得ていたことについての責任(使用者責任)であり、1つは、そんなパワハラを発生させる環境にしていたことについての責任(安全配慮義務違反)です。
ただ、法的な責任原因はいずれであっても、効果として同じで、パワハラ被害者が慰謝料等を請求できるというものです。
パワハラ慰謝料の相場は?
パワハラは、その内容や継続性などから多種多様であり一概に慰謝料相場を言い当てることは難しいといえます。実際にパワハラが問題となった裁判例では、50万円未満の慰謝料となったものから、1000万円以上を認定したものまで幅広く分布してます。とはいえ、1000万円以上のものでは被害者が自殺しているケースが多く、もっとも多く分布されているのは50万円~200万円程度といえそうですので、実際にはこれくらいの相場観を持って、具体的事情に応じて請求する慰謝料の額を決めていくことになるでしょう。
慰謝料は、被害者に生じた具体的な不利益や、行為態様、言動の内容、継続性などを中心に吟味して主張していくことになります。
パワハラでうつ病に。それ、労災です。
かつて、うつ病が労災認定されることは極めて稀な時代がありました。しかし、近年、過労やパワハラ問題が注目されるに当たり、厚生労働省が「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」を平成23年12月26日付で改訂しました。
この新規準では、
① 分かりやすい心理的負荷評価表(ストレスの強度の評価表)を定めた
② いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、その開始時からのすべての行為を対象として心理的負荷を評価することにした
③ これまで全ての事案について必要としていた精神科医の合議による判定を、判断が難しい事案のみに限定した
とされています。確かに分かりやすくなった面はあるのですが、旧基準が分かりにくすぎただけで、新基準でも素人的にはよく分からないのではないかと思います。
ただ、いずれにしても、パワハラでうつ病になってしまったような場合には労災認定される可能性があります。精神疾患について、平成26年度の労災認定を受けた人の数は497件で、うち未遂を含む自殺による認定が99件あるとされてます。しかし、警察庁のデータによれば平成26年の自殺者数は2万5533人で、その中で原因を特定できた者のうち2227人が「勤務問題」が自殺の1つの原因とされていますから、パワハラや過労などが原因で自殺した人のうち、労災認定されているのはまだまだ一部といえるでしょう。
パワハラ被害にあってるなと感じたら?
パワハラは、損害賠償の原因となるだけでなく、放置すれば被害者が精神的に病み最悪の場合には自殺に至るケースもある深刻な問題です。
パワハラに遭っていると思ったら、まず誰かに相談しましょう。ここまで、賠償だの労災だの話してきましたが、そうなる前に被害を食い止めることが被害者にとっても加害者にとっても会社にとっても一番いいはずです。月並みな言葉ですが、お金で健康は買えないのです。ましてや命はなおさらです。
ベストなのは職場の仲間や友人などに相談出来る人がいることですが、いない場合には会社内に設置してある相談窓口や、厚労省などの外部機関が設置している相談窓口などに気軽に相談してみてください。