死亡事故の賠償について知っておきたい5つのこと

死亡事故の最大の特徴-被害者の言い分が不明

死亡事故の最大の特徴、それは、被害者の言い分が得られないことです。

通常の交通事故では、事故態様などについて争いになることも多いのですが、その場合、被害者も加害者も自分の言い分を主張することができます。

しかし、死亡事故の場合、当然ですが被害者が亡くなっているので、被害者側の言い分が分からないということになります。

そのため、客観的証拠の検討や証人の証言などが非常に重要な意味を持ちます。

本人以外の慰謝料(親族固有の慰謝料)あり

通常の交通事故の場合、慰謝料を請求できるのは交通事故に遭った被害者本人だけです。

しかし、死亡事故については、被害者と一定の関係のある親族について、加害者に慰謝料請求することが認められています。

具体的には、死亡した本人の慰謝料は1800~2500万円の範囲に収まることが多いのですが、これに加えて、親族1人あたり50~300万円程度の固有の慰謝料が認められます。

ただ、裁判の場合であればともかく、示談の場合には、これらの慰謝料を大きく区別することなく、トータルの慰謝料で計算されていることがほとんどです。

交通事故賠償のバイブル的存在である赤い本でも、親族固有の慰謝料を含めた前提で慰謝料基準が掲載されています。

逸失利益計算のときに生活費控除率を掛ける

通常、後遺障害が残った場合の逸失利益の計算式は、

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(ただしライプニッツ係数を用いる)

というものです。

ライプニッツ係数というのは、ちょっとややこしいので詳しい説明は別の機会にしますが、単純に期間をそのままかけるのではなく、ライプニッツ係数を使うのだという程度で考えてください。

しかし、死亡事故の場合には、これに生活費控除率というものをかけます。

生活費控除率は被害者の属性(男性か女性か、独身か所帯持ちか、若年か老年かなど)で、おおよそ0.3~0.5が掛けられることになります。

これは一体何なのかというと、人が生きる限り生きるために必要な費用(食費とか光熱水費とか交際費とか)があるけれども、死んだのであればその費用については支払う必要がないだろうというものです。

なんか、人死んでるのに、すごいドライな話ですよね。具体的にいうと、たとえば生活費控除率0.5の場合、逸失利益は、後遺障害等級7級(労働能力喪失率56%)の場合よりも少なくなってしまうことになります。後遺障害等級7級というのは、それはそれで重症ではあるのですが、死亡の逸失利益と後遺障害等級7級の逸失利益で後者の方が大きくなるという点についてごく自然な感情としてはピンとこないかもしれません。

でも、まあ、たしかに、理屈上はそう言わざるをえない部分があり、このような運用がされているのです。

年金が逸失利益になる(ときがある)

通常、逸失利益というのはその人の労働所得を前提に計算されます。しかし、死亡事故の場合には、死亡しなければその人が受け取れたであろう所得である年金についても逸失利益として認められることがあります。

これは気をつけておいて損はない部分です。弁護士でも交通事故賠償に慣れていなかったり、他の争点に気をとられすぎてうっかり請求を落としてしまうこともありえなくはないです(たぶんないですが。)。

年金が払われることがほぼ確実であるといえる場合(年金機構に照会すれば教えてもらえます)には、年金についてもその予想額を前提に逸失利益の計算をします。

その計算は労働所得の逸失利益計算よりはちょっと複雑になります(ライプニッツ係数の用い方の関係で、通常の計算より少なめになります。)。

また、生活費控除率も労働所得の逸失利益よりも大きく取られるのが通常です。

相続問題になる

被害者が死亡する以上、損害賠償請求は相続人が行うことになります。

この交通事故による死亡についての損害賠償請求権は相続と同時に法定相続分に従って各相続人に分割され帰属することとされています。

ですので、本来的には、各相続人がそれぞれ損害賠償請求を行えばいいのですが、紛争の一回的な解決の意味合いからは、できれば全相続人との間でまとめて話をしたいところです。

また、損保会社としても、ある相続人との間では損害額につき話し合いがまとまりそうだが別の相続人との間ではまとまらなそうだという場合、前者だけをまとめるということはやりにくいというのが本音だと思います。

ですので、通常は、全相続人から依頼を受けた弁護士が窓口になって一括して解決することのほうが多いでしょう。ただ、どうしても他の相続人と協力できない、という場合もあると思います。その場合でも交渉ができないというわけではないので、いずれにしてもまず弁護士に相談に行かれるのが良いのではないでしょうか。

なお、相続人の範囲と、上記親族固有の慰謝料が発生する親族の範囲は必ずしも一致しませんので注意が必要です。

 

 

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