妻の不倫が理由で別居中、生活費は払わなきゃダメ?

別居中の配偶者の生活費を払う理由

法律上の婚姻関係が継続している限り、別居中の配偶者に対しても原則として生活費(婚姻費用)を支払わないといけません。

これは、民法に親族間の扶養義務が定められているためで(民法877条)、原則としてどういった理由で別居しているにせよ、収入の多い側から収入の少ない側へ生活費を支払わないといけないと考えられています。

婚姻費用の額については、扶養権利者が監護している子供の数などによって変わってきます。詳しくは、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」をご覧ください。

これによると、子供なしの夫婦で扶養義務者(一般的には夫であることが多いでしょうか)の年収が600万円の給与収入で、扶養権利者(一般的には妻であることが多いでしょうか)の年収が0円だとすると、義務者から権利者に対して毎月8~10万円の婚姻費用を支払わないといけません。

年収600万円というと賞与のことを考えれば月額40万円前後、賞与無しの場合でも月額50万円の給与ということになりますので、手取り金額に対する比率で考えればそれなりの比率になります。

夫婦関係が円満にいっている場合はそれほど気にならない金額ですし、むしろもっと負担していることが多いようにも思うのですが、婚姻費用の支払いが問題になっているときは、ほぼ間違いなく夫婦関係が悪化しているときですので、婚姻費用をいくらにするのかというのは揉めることが多いです。

別居の理由が配偶者の不倫でも生活費を払わないといけない?

婚姻費用を原則として払わないといけないのは分かったけど、別居の理由が例えば妻の不倫にあって、しかも妻から家を出て行ったような場合でも支払わないといけないのでしょうか?

理屈だけで考えれば、法律上の婚姻関係が継続している以上は、払わないといけないということになりそうです。

しかし、実務においては、さすがにこれはどうかなぁという素朴な感情から、信義則(法の理屈がどうしても素朴な感情に大きく反する場合に理屈を制限する裏ワザ)や権利濫用法理(権利はあるけどそれを行使するのはダメという裏ワザ)を持ちだして、このような場合の婚姻費用の請求を認めない傾向にあります。

たとえば、東京家裁平成20年7月31日審判も、別居の原因が主として申立人(妻)の不貞行為にある場合には、申立人自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されないと判断しています。

少し、安心しましたね。

親に不倫の罪あり、子供に罪なし

とはいえ、たとえば妻が不倫して家を出て行ったときに、子供も一緒に連れていった場合はどうでしょうか。

収入のある親は当然、民法877条に基づいて子供を扶養する義務を負います。離婚後の養育費の支払いとしてよく問題になる話ですね。婚姻中は、婚姻費用の中に養育費を含めて考えることが多いです。

不倫した親が子供を連れて出て行ったような場合であっても、不倫された親は養育費を支払わないといけないか。

子供に対する感情も相当複雑で割り切れない部分があるかもしれませんが、ここは法律の原則通り、不倫された親でも子供に対する養育費支払義務はあると考えられています。

不倫は親の罪であり、子供には罪はありませんからね。感情的にも、納得のいくところではないでしょうか。

ちなみに、上記東京家裁平成20年7月31日審判も、不倫して子供を連れて出て行った妻が同居の未成年の子の監護費用を請求することはできるとしています。

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