少年はどうして守られているのか―刑事法と比較

事あるごとに厳罰化が叫ばれる少年事件

少年事件という言葉は、多くの報道を重ねて今や知らない人はいないほど周知された事件類型であり、その法律である少年法というものがあることもほとんどの方が知っているかと思います。

少年事件の凶悪化や被害者の支援はよくよく報道されていますが、少年法の趣旨については十分な吟味がされないまま感情の赴くままに厳罰化が叫ばれる風潮があるように思います。少年法の存在の認識に対して、少年法はなぜ存在するのか、どのような手続なのかといった基本的なところを認識している人はとても少ないのではないでしょうか。

まず、基本的なこととして、少年法の適用対象年齢は20歳未満となり、20歳以上は刑事事件として扱われます。14歳未満には刑事責任が認められていませんし、犯罪少年としても扱われませんが、触法少年や虞犯少年として扱われ、刑罰の適用はなくても児童相談所に通告され指導や一時保護がなされることになります。また、当然ですが「少年」には少女、すなわち女性も含んでいます。男性だけが適用されるといったようなことはありません。

では、この少年法ってどんな法律なのか、刑事法とはどう違うのかを見ていきたいと思います。

 

少年法とは

どうして少年は成人と扱いが異なるのか

それは子どもは未成熟だからです。子どもは未成熟な存在であるといわれて納得しない方はほとんどいないかと思います。どんなに大人びた子どもでも何かしら未成熟な点はあるでしょう。実際、日本を含めて世界中のほとんどの国は子どもに対して法的社会的援助の必要な存在であると認識しています。

しかし、子どもが未成熟であっても成人と同じ社会で同じルールの下生活を送らなければならず、そのためには成人による援助が必要なことは否定しえないでしょう。また、未成熟であるからこそ、少年に健全育成を行えば将来の犯罪を予防することができるともいえます。そして、未成熟であるということは親を中心に社会の影響が大きいといえ、二次的には親や社会の不十分・不適切な対応にも責任があるといえます。そこで、刑罰ではなく健全育成を目的とした保護処分を行う必要があるのです。このようにして刑事の場面で成人は子どもとは異なる扱いを受けることとされています。

 

少年法の特徴

つまり、少年法は、未成熟な存在である少年に対して成人側が援助を行う法律であるといえます。

援助の内容は健全育成ということになります。少年法も刑事事件の一分野ではあるのですが、手続も下される処分も多くの点で刑事法とは異なるのです。少年法の特徴は主眼が常に少年の健全育成にあり、そのために教育的見地から少年を保護し、将来に向けて更正させるための手続・処分を行うという点にあります。

 

ここが刑事法とは違います

少年法の特徴は刑事法のように刑罰適用を目的としているのではなく、子どもの健全育成にあるということをみてきましたが、実際に手続や処分の点で何が刑事法と異なるのかを見ていきます。

 

適用対象事件

刑事事件では、刑罰法令に触れる行為を行ったとと思料される事件のみが対象となりますが、少年事件は、刑事事件に該当するような場合だけでなく、一定の事由があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある場合も対象として含まれることになります。よく、補導されるなどということがありますが、夜中に出回っている少年が犯罪を犯しているわけでなくても警察にお世話になったりすることがあるのはそのためです。

 

捜査段階

警察による捜査が進行している段階では、基本的に刑事事件と同様の捜査が行われます。事件の捜査そのものは特異なところはないのですが、少年の身体拘束に関することと、捜査機関は原則全件家庭裁判所へ送致しなければならないなどの少年法独自のルールもあります。

 

身体拘束に関して

少年事件も捜査段階では刑事事件と同様の捜査が行われることから、少年も逮捕・勾留されることがあります。もっとも、成人の場合の勾留の要件に加えて、「やむを得ない場合」でなければ勾留することは許されないとされています。しかし、実務上、この「やむを得ない場合」はかなり容易に認められる傾向があり、成人の場合の勾留と要件に差はないといってもいいくらいだと個人的には感じています。

ただし、勾留時の対応には違いがあります。少年が勾留されるのはほとんどが警察の留置施設になりますが、ここでは成人と分離して勾留されることとされているのです。少年を成年と同じ留置施設に勾留することにはさまざまな悪影響があるといわれており、子どもの権利条約などの国際準則でも要請されています。

この他にも勾留に代わる観護措置といった制度もあるにはあるのですが、実務上、ほとんど用いられていないというのが現状です。

 

送致に関して

検察官は刑事事件の捜査を遂げた後、起訴猶予や微罪処分として事件を終了させる権限があります。しかし、少年事件においてはこれが認められていません。

つまり、検察官は少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合でも家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合は、すべての事件を家裁に送致しなければならないとされています。家裁は少年保護の専門機関とされており、当該少年に対してどのような処遇が適当かの判断を委ねているのです。

警察官も刑事事件の捜査を遂げた後、罰金以下の刑に当たる犯罪については、検察官ではなく、家裁に直接送致しなければならないとされています。また、警察官もこの場合全件について送致しなければならないとされているのです。

 

家裁送致後

捜査段階と異なり、家裁送致後の手続は成人の刑事事件とは大きく異なります。

少年法の出番はここにあるともいえるほど違いがありますので、ポイントを絞ってみていくことにします。

 

弁護士に関して

弁護士が刑事事件の被疑者の弁護活動を行う場合は「弁護人」と呼ばれますが、少年事件の少年の弁護活動を行う場合は「付添人」と呼ばれます。付添人は同一の弁護士であっても捜査段階と、家裁送致後それぞれで選任しなければなりません。

 

審判対象に関して

刑事事件の審判の対象は、公訴事実という起訴状に記載されている犯罪事実です。

一方、少年事件は非行事実に加えて要保護性も審判の対象となります。

この要保護性とは、①少年の性格や環境に照らして将来再び非行に陥る危険性があること(再非行の危険性)に加えて、②保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性および③保護処分による保護がもっとも有効かつ適切な処遇があることが認められることをいいます。

 

家裁送致後の身体拘束について

家裁送致前は勾留によって身体が拘束されることはあっても、送致後は勾留により身体拘束されることはありません。送致後の身体拘束については、観護措置という形で行われます。観護措置は通常4週間以内ですが、最大で8週間行われることもあります。観護措置は身体拘束のみならず、少年の心身の鑑別を行う手続です。

 

事件の調査について

送致された審判に付すべき少年は、家庭裁判所により調査されます。調査は2つの事項に分けて調査され、非行事実があったかどうかを調査する法的調査は裁判官が、要保護性を調査する社会的調査は裁判所書記官が行うとされています。この社会的調査は、少年や保護者と面接したり、学校や被害者に文書で照会するなどして行われますが、少年の処遇に大きく影響することになるので、適切な対応が必要です。

 

事件の記録について

少年事件の記録は、法律記録と呼ばれる捜査機関から家裁に送付される記録と、社会記録と呼ばれる家裁送致後に上記の調査に基づき作成された調査官の調査票や少年鑑別所の鑑別結果などが綴られた記録とに分類されます。社会記録については謄写(コピー)することが許されておらず、法律記録も裁判所が許可した部分しか謄写できないので、現場での閲覧でしか記録を確認することができません。なお、刑事事件であれば、公開の法廷で行われますので、記録の謄写も可能です(制限はあります。)。

 

審判について

刑事事件は公開の法廷で公判手続が行われますが、少年事件は非公開で審判が行われることになります。また、刑事事件は当事者主義的構造といわれる、検察官vs被告人(弁護人)という形で裁判が行われますが、少年事件は職権主義的構造といわれる、裁判官主導という形で審判が行われます。

 

処分について

刑事事件における刑罰とは異なり、教育を目的とした保護処分が下されるのが少年事件です。保護処分には、保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設送致、少年院送致の3種類があります。

また、刑事処分が相当と判断されれば、家裁から検察官に事件が送致されることとされています。この場合は、成人と同様の刑事手続が進行します。刑事事件の審理の結果、やはり保護処分が相当とされる場合もあります。

 

試験観察

保護処分に付するかどうかの最終決定をする前に、相当期間、少年を調査官の観察に付する決定がなされることがあります。

これが試験観察というものです。これは、少年が社会内で更正できる可能性を試して、就職活動を含む社会生活上の問題を整理し、要保護性の解消を目指すことになります。これにより、保護処分決定を回避し不処分となることもあるので試験観察が行われるか、行われる場合にどうすべきかは非常に大事なポイントとなります。

 

少年事件の凶悪化?・非行少年と被害者

この記事の最初のところで、”少年事件の凶悪化や被害者の支援はよくよく報道されていますが、少年法の根幹はこれらの問題ではない”と述べましたが、根幹ではないとはいえ気になるところではないかと思います。そこで、少年事件は凶悪化しているのか、また、被害者の支援はどうなっているのかを見ていきます。

 

少年事件の凶悪化?

何を持って凶悪と呼ぶのかというのは人それぞれでしょうが、一般的には、殺人事件、強盗事件、強姦事件、放火事件が凶悪事件に該当すると言われています。

では、凶悪事件は増加しているのかというと、実は、そのようなことはありません。

むしろ、減少傾向にあるとさえ言われています。犯罪白書という無料で公開されているデータではそのことが実証されています(検挙件数はこちら。犯罪別の件数はこちら。どちらも平成26年版犯罪白書より)。

もっとも、これらの統計データは検挙数であって実数ではありません。世論情勢やこれによる捜査機関側の摘発態度によって変動を受けるので実数ではないということになります。例えば、少年事件の凶悪化が叫ばれ、捜査機関が摘発態度を厳しくすれば統計データは上昇することになるでしょう。とはいえ、少年事件の凶悪化などの報道がある現在でも減少傾向にあるということはやはり減少傾向にあると考えるのが素直であると思います。

そこで、見ておきたいのは共犯事件の増加傾向という点です。少年の共犯と言えば少年ギャングや暴走族などがイメージにあると思いますが、現在これらの共犯事件は極端に少ないと言われています。現代型としてイメージしやすいのはオヤジ狩りでしょう。このように、繁華街ではなく、住宅街で、得体の知れない犯行が増加すれば凶悪事件が増加したという感覚を持つのかもしれません。あくまで、この点は感覚の話になってしまいますが。

他にも、通り魔的な殺人方法などこのような点の質に関しての凶悪化などを感じるのかも知れませんが、この点についても疑問があります。青少年非行・犯罪史資料(赤塚行雄・著)という戦前から70年代にあった少年事件報道をまとめた書籍があります。これによれば、通り魔的犯行もあれば衝動的な殺人もあり、「今の方が凶悪だ」とは到底いえません。記憶に新しいところで言えば、90年代の女子高生コンクリート詰め殺人や神戸連続児童殺傷事件など2015年現在よりも質的によりセンセーショナルな事件があったといえるでしょう。

 

非行少年と被害者

非行少年は確かに少年法により保護を受けています。このことが影響して、通常の刑事事件以上に被害者の被害感情は大きくなる傾向にあるといえます。

元来、刑事事件も含めて、被害者は刑事事件に関与できないという状況にありましたが、現在では被害者も一定程度の関与が認められています。たとえば、被害者参加制度や損害賠償命令制度がこれにあたります。

この他にも犯罪被害給付制度や各捜査機関からの情報開示など少年事件の分野でも被害者への配慮が重視されてきています。また、実際に少年審判において傍聴したり意見陳述することができるなどの手続関与も行われるようになりました。また、審判記録についても法律記録については閲覧謄写することが可能です。

さらに審判がなされた後少年はどのような処遇になるのか被害者の視点を取り入れる仕組みも採用されています。

何か一つの犯罪を取り出して、被害者側の立場から厳罰化を叫ぶことは簡単です。しかし、少年法により多くの少年が更生に導かれているであろうことにも同時に思考を至らし、適切な法感情とのバランスを図っていくことが必要不可欠であると思います。

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